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夏祭り

 まったくなんて奴らなんだろう。中3の夏休みといえば、一心不乱に勉強に励み、受験に向けての基礎作りをしっかりしなければいけない時なのに、ちょっと近くに夏祭りがあるからと言って、こんなにも大勢塾を休むなんて・・。まったくいい加減にしてほしい、そんなことを許す親も親なんだけど、「せっかくのお祭りなんだからたまにはいいでしょう?」とか言われたら簡単にOKを出してもらっては困ってしまう。一応こちらにも学習計画というものがあるのだから、それが狂ってしまうじゃないか。いったい何を考えているんだろう。ひどい生徒になると、夏休みになって3週連続で色んなお祭りに出かけて、3週連続で土曜日の塾を欠席している不届き者までいる。「よく遊び、よく学べ」と言われるけれど、現実はそんな甘いものじゃない!!まったく親子そろって意識が低いからいやになる・・。

と、ついつい愚痴を言いたくなるほど夏休みになってから土曜日の出席率が悪い。毎週末どこかで夏祭りが開かれているため、土曜日になると欠席する生徒からの電話が何本もかかってくる。「夏休みに勉強しなくていつするんだ!」と、電話に出るたびに叫びたくなるが、親が認めて電話してくるのだから、どうしようもない。「はい、分かりました」と答えるだけだが、心の中では「後で泣くぞ」とブツブツ言っている。
 でも、無理もない話だ。祭りは楽しいし、中学生がおおっぴらに夜出歩けるのは祭りの時ぐらいだろうから、出かけたくてウズウズする気持ちは分からないでもない。そんな気持ちを押し殺して無理に塾に来たところで、勉強がはかどるとは思えないから、行きたいなら行ってスッとしたほうがいいのかもしれない。私だって祭りは好きだ。特に夏祭りで夜店をひやかすのは大好きだ。なので、塾をサボって夏祭りに行ってしまう子供たちの心情は理解できる。しかし、塾長としての立場からは、そんなに物分りのいいことばかり言っていられない。そんなジレンマに悩まされながら、悶々と土曜日を過ごしている。

 そんな誰をも惹きつける夏祭りを歌った名曲は多い。しかし、私が知っている中では、かせきさいだぁ≡が1996年にリリースしたアルバム「かせきさいだぁ≡」の中の「じゃっ夏なんで」という曲以上に夏祭りの情景を詩的に歌ったものを知らない。

      「じゃっ夏なんで」 (加藤丈文/多摩川貞夫)
  ボクが随分素早く汽車から降りたタメ 雲を焦がしたくらいさ
  梶井基次郎の檸檬の中に出てくるような街の中は
  埃っぼい匂いが立ち込める 通り雨のアトで
  又鳴き出した蝉の声響く路次は 駒絵と化したかのよう
  遠くから聞こえる祭り囃子 背筋を伸ばした向日葵
  横を擦り抜ける少年の 飛び込す水溜まりを跨いでから
  丁度そこの角を曲るボクの視界に飛び込むのは
  どこか大人びたキミと モコモコとソフトクリームのような入道雲

  今迄ダンマリを決め込んでた風鈴達さえ いきおい騒だしたのは
  ボクでさえ初めて見る キミの浴衣姿の所為だけじゃなくて
  その口元 スッと引かれた紅の熱に浮かされたボクが
  風をこうドッと辺りに巻き起こしたからさ
  神社への道はちょっとした賑いを見せ ユラユラ燃える陽炎蝉時雨
  喉はカラカラさ(嗚呼 さいだぁがあればこんな日は・・)
  でもキミのリクエストに応えシャクシャクと キミと一緒に食べるカキ氷

  夜ともなれば 二人は誘蛾灯に誘い寄せられる虫達の如く
  祭りに向かう人波の中 「ウスバカゲロウさ キミは」
  ボクの呟き声に薄化粧を直した キミが振り向くとしたら
  湯上がりのシッカロールのにほいをほんの少しだけフワッと夜風に乗せる
  又は夏の "Flora"
  カランコロン鳥居潜り カンラカンラと笑い声響く境内に尺玉花火も加わり
  キミの口唇紅を増し浮かんだ ホラ鹿も舞う夏の夜空!
  帰り道の川原はコロコロと 河鹿鳴き
  口に寄せるリンゴアメ


ヒップホップとかラップとかはあまり好きじゃないが、時々胸を射る曲がある。まさにこの「じゃっ夏なんで」こそが、そんな曲だ。
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