毎日いろんなことで頭を悩ましながらも、明日のために頑張ろうと自分を励ましています。
疲れるけど、頑張ろう!
パブリックな人
対談集「橋本治と内田樹」を読んだ。
330ページほどの本書を読み終わるのに相当時間がかかった。確か読み始めたのが3月の終わりだったから1ヶ月もかかったことになる。内容が面白くなかったというわけではない。内田先生が聞き役に回って、橋本治の正体不明なところをうまく引き出して、「橋本治って何かすごい」と思わせるのだから、内田先生も相当な手管れだ。そのため、対談集と銘打ってはあるが、実際は「橋本治に対するインタビュー」と呼んだ方がいいかな、と思わないでもなかった。橋本治という怪人物(と今まで私は思っていたが・・)の本当の姿まではとても解明できなかったようにも思うが、たとえ一部なりとも読者に分かる形にまで、橋本治をプロデュースできたのは、やはり内田先生だからこその手腕であると私は思う。
3月の終わりから4月にかけては、塾の新学期と重なって、色々やることがあり、心も落ち着かなかったから、明るいうちは本を読む時間などまるでなく、夜も疲れて布団に入った瞬間に眠ってしまうことが続いて、本書を読み進めることがなかなかできなかった。4月半ば頃になって、少し時間にゆとりができたものの、その頃から歯痛に悩まされて、読書に集中できなかったのも、これほど時間がかかってしまった原因だろう。(それに対談集にありがちな短い言葉の応酬などではなく、じっくりと己の思うことを橋本が述べる場面も多かったので、TVのインタビューを聞いているような手軽さはなかった)
また、私が橋本治という人物をほとんど知らなかったことも読み終えるのに時間がかかった理由かもしれない。「桃尻娘」は知っているが、本を読んだことはなく、映画を見た記憶があるくらいで、私にとって橋本治はほぼ未知の作家であった。いかつい顔は昔から知っているが、実際に彼の作品を読んだことはなく、どちらかと言えば読みたくない部類の作家かな、と勝手に思い込んでいた。しかし、この対談を読んで、橋本治のすごさ--日本の古典文学に通暁し、それをバックボーンとして己が興味を持つことを一貫して追求してきた--を幸いにして体感できた。私には到底真似できそうもない思考回路の持ち主であるが、そんな彼を本書では繰り返し「パブリックな人」と表現している。それは内田先生のみならず、橋本治自身も認めているから、真にパブリックな人なのだろう・・。
内田 橋本さんて、ほんとにパブリックな人ですよね。
橋本 そうなんですよね。プライベートな部分がぜんぜんないんですよ。
内田 なんで社会に対してこんなに責任感があるんだろうって思うんですよ。
橋本 それねー、自分じゃ謎なんですよ、ほんとうに(笑)。 (P.35)
内田 橋本さんってすごくパブリックな人だっていう話をしたじゃないですか。基本的にあんまり「私的なところ」がないんですよね、橋本さんて。ふつうみんあ、自分の根っこみたいなものをすごく信じているじゃないですか。でも、橋本さんて、実は意外に「私的なもの」にこだわっていないんじゃないかなって。(P.188)
橋本 俺はパブリックな人だから自分の仕事の範囲は責任をもってやるけど、それ以外は他人の仕事で他人がやるもんだと思ってる。他人を信用してそこをやらないでいるというのがパブリックでしょう、と。
内田 そうです。僕もまったく同じ意見ですね。
橋本 ときどきなんかやっている人が集まって、「ああ、今までみんなでパブリックの分け合いをやっていたのか。じゃあ、そのまんまでいいじゃないか」と言って、もう一回散るみたいな、俺はそういう離合集散の繰り返しです。(P.228)
「パブリック」という言葉だけで橋本を理解しようとするのは余りにも無謀だろうが、何らかのヒントにはなるように思う。簡単に理解などできる人物でないことだけは、本書を読んでよく分かった。本書の中で私が一番感じ入った次の言葉を読めば、彼の奥行きの深さが感じ取れるのではないだろうか・・。
橋本 (前略)いまは小さな人たちが何か能力を持っていなくちゃいけないんだけど、その能力の使い方を間違えているから、プライドだけ高くなって、統合障害になるみたいな方向にいくだけの話。
やっぱり参加じゃなくて、何かを参考にしなくちゃいけないんですよね。それで、参考にする以上、縁側がないと困るという、そういうものだと思う。人と人の間に微妙な距離を置かない限り、人との関係は深まらない。だから、縁側を作れ、縁側をキープしろという話ですよ。(P.285)
「距離を置かないといい関係ができない」--なんて真理!!
330ページほどの本書を読み終わるのに相当時間がかかった。確か読み始めたのが3月の終わりだったから1ヶ月もかかったことになる。内容が面白くなかったというわけではない。内田先生が聞き役に回って、橋本治の正体不明なところをうまく引き出して、「橋本治って何かすごい」と思わせるのだから、内田先生も相当な手管れだ。そのため、対談集と銘打ってはあるが、実際は「橋本治に対するインタビュー」と呼んだ方がいいかな、と思わないでもなかった。橋本治という怪人物(と今まで私は思っていたが・・)の本当の姿まではとても解明できなかったようにも思うが、たとえ一部なりとも読者に分かる形にまで、橋本治をプロデュースできたのは、やはり内田先生だからこその手腕であると私は思う。
3月の終わりから4月にかけては、塾の新学期と重なって、色々やることがあり、心も落ち着かなかったから、明るいうちは本を読む時間などまるでなく、夜も疲れて布団に入った瞬間に眠ってしまうことが続いて、本書を読み進めることがなかなかできなかった。4月半ば頃になって、少し時間にゆとりができたものの、その頃から歯痛に悩まされて、読書に集中できなかったのも、これほど時間がかかってしまった原因だろう。(それに対談集にありがちな短い言葉の応酬などではなく、じっくりと己の思うことを橋本が述べる場面も多かったので、TVのインタビューを聞いているような手軽さはなかった)
また、私が橋本治という人物をほとんど知らなかったことも読み終えるのに時間がかかった理由かもしれない。「桃尻娘」は知っているが、本を読んだことはなく、映画を見た記憶があるくらいで、私にとって橋本治はほぼ未知の作家であった。いかつい顔は昔から知っているが、実際に彼の作品を読んだことはなく、どちらかと言えば読みたくない部類の作家かな、と勝手に思い込んでいた。しかし、この対談を読んで、橋本治のすごさ--日本の古典文学に通暁し、それをバックボーンとして己が興味を持つことを一貫して追求してきた--を幸いにして体感できた。私には到底真似できそうもない思考回路の持ち主であるが、そんな彼を本書では繰り返し「パブリックな人」と表現している。それは内田先生のみならず、橋本治自身も認めているから、真にパブリックな人なのだろう・・。
内田 橋本さんて、ほんとにパブリックな人ですよね。
橋本 そうなんですよね。プライベートな部分がぜんぜんないんですよ。
内田 なんで社会に対してこんなに責任感があるんだろうって思うんですよ。
橋本 それねー、自分じゃ謎なんですよ、ほんとうに(笑)。 (P.35)
内田 橋本さんってすごくパブリックな人だっていう話をしたじゃないですか。基本的にあんまり「私的なところ」がないんですよね、橋本さんて。ふつうみんあ、自分の根っこみたいなものをすごく信じているじゃないですか。でも、橋本さんて、実は意外に「私的なもの」にこだわっていないんじゃないかなって。(P.188)
橋本 俺はパブリックな人だから自分の仕事の範囲は責任をもってやるけど、それ以外は他人の仕事で他人がやるもんだと思ってる。他人を信用してそこをやらないでいるというのがパブリックでしょう、と。
内田 そうです。僕もまったく同じ意見ですね。
橋本 ときどきなんかやっている人が集まって、「ああ、今までみんなでパブリックの分け合いをやっていたのか。じゃあ、そのまんまでいいじゃないか」と言って、もう一回散るみたいな、俺はそういう離合集散の繰り返しです。(P.228)
「パブリック」という言葉だけで橋本を理解しようとするのは余りにも無謀だろうが、何らかのヒントにはなるように思う。簡単に理解などできる人物でないことだけは、本書を読んでよく分かった。本書の中で私が一番感じ入った次の言葉を読めば、彼の奥行きの深さが感じ取れるのではないだろうか・・。
橋本 (前略)いまは小さな人たちが何か能力を持っていなくちゃいけないんだけど、その能力の使い方を間違えているから、プライドだけ高くなって、統合障害になるみたいな方向にいくだけの話。
やっぱり参加じゃなくて、何かを参考にしなくちゃいけないんですよね。それで、参考にする以上、縁側がないと困るという、そういうものだと思う。人と人の間に微妙な距離を置かない限り、人との関係は深まらない。だから、縁側を作れ、縁側をキープしろという話ですよ。(P.285)
「距離を置かないといい関係ができない」--なんて真理!!
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