★ 今日は中沢けいさんの「海を感じる時」(講談社)を読んだ。この作品も学生時代に一度読んでるので再読。当時18歳の大学1年生が書いた作品というので評判になった。「子宮感覚」というフレーズが印象に残っている。
★ 怒涛の学園紛争が終わり、「無気力、無責任。無感動」と呼ばれた時代。主人公の女子高校生は部室で1年上の先輩から「口づけ」したいといわれ、好きでもないのに応じてしまう。
★ しかしそれが彼女の性を目覚めさせてしまったようだ。体験が深まるにつれ、彼女は男を追うようになる。男は彼女のことを好きだったわけではない。追われれば逃げる。卑怯と言えば卑怯だが、会えば彼女に触れてしまう。性欲だけを求めることで自己嫌悪に陥り、ますます彼女から離れようとする。
★ 物語は、彼女が置かれている家庭環境、特に母親との関係に言及する。湊かなえさんの小説に「母性」というのがあるが、母と娘の関係もなかなか難しそうだ。
★ 主人公は高校を卒業し上京する。どうやら妊娠をしたようだ。男はあきらめたのか、彼女と同棲を始める物語はそのあたりで終わる。
★ 年をとってから読むとなんともかわいらしい物語だ。現実の世界はもっとどろどろしているし、もっと理不尽だ。若い頃の純粋さがうらやましくもある。しかし、若い人は若い人なりに深刻に悩んでいるんだね。私もその頃を思い返す。
★ 「海は見るものではなく、感じるものだ」(147頁)。「海の水には。ねばりけがあるようだ。タールの海だ。私の下腹にもタールの海がある。・・・世界中の女たちの生理の血をあつめたらばこんな暗い海ができるだろう」(151-152頁)