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「写真新世紀・大阪展 2006」

2006年05月21日 22時55分00秒 | 「徒然随想。」
写真新世紀」とは、キヤノンが10年前ぐらいからやっている新人写真家発掘を目的とした公募コンテストである。
僕にとっては、僕が写真学校の学生時に、当時、堀内孝雄にそっくりだった写真評論家:飯沢耕太郎が創刊させた「デジャ=ヴュ」という雑誌の作品コンテストという印象が強く、実際、始まりはそうだったはずである。写真の枠を超えた新しい写真、新しいアートを発掘する主旨で「新世紀」だったと思う。その後、「デジャ=ヴュ」は廃刊。この公募コンテストだけが残ったというわけだ。
ちょうど、この「写真新世紀」が始まった頃は、世の中の写真人口がかなり増えてきた頃で、この手の新人発掘の企画は、他にもかなりの数で立ち上がった覚えがある。今でも続いているもので言えば、リクルートがやっているガーディアン・ガーデン「ひとつぼ展」であろうか。

そんな「写真新世紀」の優秀作の巡回展である「写真新世紀 大阪展 2006」が、先月、大阪・OAPで行われており、ほんと、ひょんなきっかけで観てきた。
というよりは、実は近くで所用があり、ちょっと時間ができたので、時間潰しのつもりで会場に入ってみたのだ。
ところが、思わず真剣に観てしまった。いや、そうさせてしまう作品が、僕の目に飛び込んできたのだ。


会場に入ると「こんなところに、こんなきれいなギャラリーがあったのか」と思ってしまうほど、非常に良くできたギャラリーである。ただ、キヤノンなのになぜ梅田でやってやらないのか疑問には思ったが。
会場の中には、自分の何十年前を思い出させる写真学生と思しき若者が十数名いたが、このような会場内でも普通にじゃべりまくる最近の若者の無神経さは残念だ。まず先に写真よりもマナーを学ぶべきだろう。世の中には、シャッター音さえ許されない現場があったりするのだ。(それでも何か撮ってこないと仕事にならんのだ)(こんなことを言うのは年のせいか?)
そんな写真家には到底なれないだろう若者(そして、僕は写真家には到底なれなかったオヤジ←それも過去形)をよそに、その優秀作品を観ていった。
中には、じっーと見ていると確実に目を悪くしそうな作品をはじめ、今風の劇場型的とも言える、ありがちな作品が並んでいた。
その中で一際、視覚でモロに僕の目玉に訴えてきた作品がひとつあった。

西野壮平さん(年下だが、「さん」付けさせてもらう)の「Diorama Map」だ!

これこそ、芸術だろう。僕なら、間違いなくグランプリ(に選ぶ)。
まず、手が込んでいる。とにかく、手が込んでいる。時間と労力が掛かっている。そして、パワーを感じる。岡本太郎風に言うなら、「爆発!」している。
それぞれの街で撮影した、たぶん、何百~何千にもなるカットをコラージュ。1枚物にし、それを複写しているようだ。その行為によって浮かび上がる画像は、彼の世界を十分表現しているし、彼の芸術的センスの良さを示している。写真がモノクロなのも彼のイメージに近いのだろう、僕も正解だと思う。
本当に、この作品は、時間をかけ、じっくりと観てしまった。観ているこちらまでパワーをもらった気分だ。

それに、この作品は、クドクドと説明する必要がないだろう。
この作品の本質は、観ればわかる。僕じゃなくてもわかる。写真に詳しくない人が観ても、何かしらの凄さを感じる作品であることはわかる。

この作品、その行為こそが芸術だと思う。
でなければ、何を芸術というのだろう?

最近の写真芸術は、クドクドと言葉で説明をしないと理解できない作品が多いように思っている。
それは、写真芸術というものが、単純に「ネタ切れ」状態になってきている証拠であり、未来がなくなってきていることをさしている。
そのような状態は、実はこの「写真新世紀」がスタートした頃から始まっていたことであり、だからこそ、「写真世紀」だったはずである。
確かに、初期の頃に選出されていた作品には、「新」を感じたが、それ以降はどうだろう?
もう「写真芸術」は、その枠にこだわりつづけ「伝統芸能(それはそれで良いのだが)」のように固執することなく、その枠を遠慮なく打ち破り、新しい創造物を創るべきであるように思うくらいだ。
だからこそ、今回の西野さんの作品には、目が釘付けになったのだろう。僕の思う「新しい創造物」に近い。

かく言う僕は、大成した人間でもないので、偉そうな事は言えた義理ではない。
今年の7月に、久しぶりに作品を発表する予定があったが、それも、諸般の事情により、辞退することとなった。
そんな若い頃の数十年間を「写真」と言うものに懸けた人間としての憂いである。オヤジのたわ言として聞いていただければ、それはそれで、幸いである。

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