かねうりきちじの横浜・喫茶店めぐり

珈琲歴四十年の中の人が、珈琲豆荷揚げ量日本一を誇る横浜港のある町の喫茶店でタンザニア産コーヒーを飲み歩きます

本がいっぱい

2011年02月04日 | 旧ブログ記事(文化財関係)
 今日は、ちょっとした用事があってたぬきのぽんたがいる江刺に行って来ました。

 用はすぐ終わったので、えさし郷土文化館へ。

 前から見たいと思っていた企画展「掘り出された文字と現代の浄写」を見学するためです。

 お目当ては東北新幹線の工事の事前調査で落合Ⅱ遺跡から出土した土器です。

 落合Ⅱ遺跡は今から1100年前の遺跡。

 残念ながら新幹線工事対象地のみの調査なので建物跡などは見つかっていませんが、岩手県の古代遺跡としては珍しく木簡(木に文字が記されたもの)が出土している他、木製の農具も見つかっています。

 こうしたことから江刺郡の役所の候補地としてもあげられています。

 そして何といっても、この遺跡の特徴は、墨書(ぼくしょ)土器といって文字が記された土器が210点も出土していることです。

 1遺跡あたりの点数は岩手県一でしょうし、調査面積あたりの点数としては日本でも有数なのではないかと思われます。

 がしかし、書かれた文字のほとんどは「本」の一文字。

 さぞや昔の人は皆文字が書けたのだろうと思いきや、実はそうではありません。

 それは日本の筆跡心理学の草分けである黒田正典さんによれば、すべては同一人物によって記されたものだと鑑定されているからです。

 その後、遺跡から墨書土器がたくさん出土したからといって昔の人の識字率が高かったとはいえないということがだんだん分かってきました。

 そのきっかけは、現在、千葉県の国立歴史民俗博物館の館長を務めている平川南先生が黒田正典さんと一緒に研究を進めたことにあるといってもよいでしょう。

 実は、最初に書いた「ちょっとした用事」は平川先生と一緒に墨書土器を解読するというものでした。

 そういうわけで、文字に関する縁を感じた一日でした。

 そうそう、企画展は2月13日(日)までです。

 日本の墨書土器研究の原点といってもよい資料を見にぜひえさし郷土文化館までおいで下さい。

 
「本」と記された土器(左)。これはホンの一部。えさし郷土文化館はえさし藤原の郷の隣です。
コメント (2)
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