『昭和史』というタイトルの本は、(少なくとも)四つある。
遠山茂樹・藤原彰・今井清一版(岩波新書、1959)、半藤一利版
(平凡社、2006)、古川隆久版(ちくま新書、2016)と、遅まきな
がらここに取り上げる中村隆英著の東洋経済新報社版(1993)だ。
中村隆英(1925-2013)は、経済統計学、日本経済論、経済史を専
門とする元東大経済学部教授。
「政治・経済・社会・文化を複合的にとらえた現代史」(本書の帯)
であり、どのページを開いても、ポイントがおさえられ、バランス
がいい。
本書は「昭和史」の入門書として最適といっていいのかもしれない。
四つを読み比べるのもおもしろいかも。
本書は、平成5(1993)年度の大佛次郎賞を受賞している(→こちら)。
<目次>
(上巻)
はじめに
序章 第一次世界大戦の衝撃
第1章 ひよわなデモクラシー
第2章 「非常時」から「準戦時」へ
第3章 軍服と軍刀の時代
第4章 「大東亜共栄圏」の夢
(下巻)
第5章 占領・民主化・復興
第6章 「もはや戦後ではない」
第7章 成長を通じての変貌
第8章 「大国化」と「国際化」
むすび
中村隆英『昭和史』(東洋経済新報社)★×5
古川隆久『昭和史』(ちくま新書)★×4
私からすると、時として、いささか「あれっ?」という記述がある。
満州事変前夜--「満蒙問題」に触れてもよかった?
(戦後史)「学生運動と大学紛争」(p331)はよくまとまっている
のでは?
--三派系全学連過激派の活動(新宿騒乱等)は、当時も一般国民
(一般学生も含む。)にまったく評価されていなかった、といえる
だろう。
動機が何であれ(ということが大切だが。)、左右の暴力は民主主
義の敵だ。「動機さえよければ」暴力は許されるでは五・一五事件
だ。
(私の記憶)当時、国会で、共産党に「わざと過激派学生を泳がせ
ている」と追及された佐藤首相はカンカンに怒っていた。
昭和44(1969)年は騒々しい年だったが、当時、予備校(一橋学院)
の川又先生(数学)の「割り切ってやろうよ」という言葉にハッと
した。
半藤一利『昭和史』(平凡社)
口述筆記による作品。戦前の方が詳しい?半藤さんのこだわり?
現在の評価は★×4。
遠山・藤原・今井『昭和史 新版』(岩波新書)
唯物史観による記述。大学受験時代にお世話になった。
今となっては★×3かな?
・昭和20年8月9日、ソ連が日本に参戦。→「明らかな日ソ中立条約違反」を書い
ていない。(p239)
・昭和25年6月25日、スターリン、毛沢東の了解を得た北朝鮮が韓国侵攻。→北朝
鮮の「宣伝」に沿って、「最初に韓国軍が38度線を越えて、北朝鮮へ侵攻」した
記述になっている。(p276)
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