『城山三郎 ゴルフの時間』(ゴルフダイジェスト新書。2007/9/
26)を読む。
おもしろい。以下はその抜粋。
<もしもゴルフがなかったら・・・・・・>
(戦争が終わって)寝る時間すらもったいないと思っていたから、時にはヒロ
ポン(覚醒剤の一種)を使い、何かにとり憑かれたように朝から晩まで本を読
んでいた。
そんな日々を続けていたら、今度は、眠りたいのに寝られないという状態にな
り、いつしか私はヒロポンと睡眠薬に頼るようになっていった。
心配した女房に連れられて病院に行き、結局、入院するハメになった。
「一週間に一日でよいから、朝から晩まで身体を使って、疲れ果てて寝るよう
にしなさい」
主治医にそう言われて始めたのがゴルフだった。
<留さん伝授のプッシュ打法>
ぼくのスウィング、変でしょう。宮本留吉さんの改悪の結果なんですよ。ゴル
フを始めて三年位は、人に教わるのがいやで自己流できたんですよ。練習場で
打っていたら、あまりヒドイから留さんが見てくれた。
ゴルフを始めてどのくらいになるかと聞くから、「二、三年」と答えたら、
「えっ!二、三ヵ月の間違えじゃねえの?」
帰りに家まで送って来てくれて女房に、
「御主人のゴルフはひどすぎるから、あなたがもっとしっかりやらせなくては
だめだ」
と言うんですよ。
それを聞いてた女房が、
「あなた、いままでゴルフに行くと言って出かけていたのは、あれは本当はど
こに行っていたんですか」
「無所属の時間」を持つ
随分と昔の話になるが、私の所属する茅ヶ崎のスリーハンドレッドクラブで”昭
和の妖怪”の異名で知られた故・岸信介元首相が、一人でプレーをしていた。
見ていると、岸さんは打ち下ろしのパー3でミスをしたらしく、終わってからも
ホールアウトせずにまたパットをやり直している。
「おい、遅いぞ!」
私がそう怒鳴ると、周囲の人間が、
「城山さん、プレーなさっているのは、岸総理ですよ」
と窘(たしな)めた。しかし、遅いものは遅いし、グリーンを何度もやり直す
のはマナー違反。総理大臣であろうと、ゴルフに肩書は関係ない。
*たしかにゴルフ場で名刺交換することはない。
ゴルフは性格も出るし、人生そのものだ。
『城山三郎 ゴルフの時間』(ゴルフダイジェスト新書)
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