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ヘレン・ミアーズ『アメリカの鏡・日本(完全版)』(角川ソフィア文庫)★★★★

2016-04-20 05:00:00 | 近現代史

時間もできたので、ぼちぼちと、少したまった「読書」の記事もアップし
ていきたい。

平成27(2015)年12月、ヘレン・ミアーズ『アメリカの鏡・日本』(完全
版)(角川文庫)が出版された。

本書は、伊藤延司訳で、平成7(1995)年、アイネックスより出版され
た後、平成17(2005)年、角川書店より単行本と抄訳の新書版が発
行され、昨年あらためて文庫版となったものである。

著書のヘレン・ミアーズは1900年ニューヨーク生まれ。メリーランド
州のガウチャー女子大学を卒業。1925年に友人の誘いを受け、中
国北京に滞在、その間に日本を訪れる。帰国後、ジャーナリストとし
て活躍。1935年には再び来日。1942年、日本体験をまとめた『亥
年』を出版。戦争中は、日本専門家として占領地民政講座で講義。
戦後、GHQに設置された労働諮問委員会11人のメンバーの一人
として、日本の労働法の策定に参加した。米国に帰国後、極東国際
軍事裁判判決が下された1948(昭和23)年に原書を出版した。


著者は、「1948年当時の米国」に対して、事実を列挙し、いささか耳
の痛いことを言っている。

著者の主張するところを各章から取り上げると・・・・・・

第一章 爆撃機から見たアメリカの政策
 「パールハーバーの仇を討とう」というのが私たちのスローガンだっ
 た。それは達成された。しかし、パールハーバーの報復から満足感
 を味わおうが、報復の繰り返しという歴史の挑戦を受けるのだ。

第二章 懲罰と拘束
 パールハーバーは「一方的攻撃」ではない。アメリカが日本に仕掛
 けた経済戦争への反撃だ。

第三章 世界的脅威の招待
 日本人は、はたして「文字どおり死ぬまで戦う力を示した人種」だっ
 たのだろうか。武装解除された日本を占領する必要があるのだろう
 か。

第四章 伝統的侵略性
 神道と「天皇制」が戦争をつくり出すのではない。神道はあくまで民
 族内部の信仰だ。

第五章 改革と再教育
 秀吉の朝鮮出兵があるくらいで、日本人は生まれつきの軍国主義
 者でも拡張主義者ではない。一方、15世紀から西洋諸国は「世界
 征服」を続けてきた。

第六章 最初の教科「合法的に行動すること」
 欧米は、明治以来、日本に「合法的に行動すること」を教えてきた。
 韓国併合は「合法的」だった。

第七章 鵞鳥のソース
 満州(正しくは、満洲)事変は単純なものではない。「九ヵ国条約」な
 どと「合法的自衛権」の争いだ。

第八章 第五の自由
 日本は満州、中国を世界の自由貿易体制から切り離そうとしている、
 というのが私たちの対日非難であるが、日本に言わせれば、その逆
 である。

第九章 誰のための共栄圏か
 米英が満州事変に懸念を表明した時、米英は同時に治外法権を返
 したり、不平等条約を放棄したりなどしなかった。

第十章 教育者たちの資質
 日本が実際に「人道に対する罪」を犯したとしても、私たち(米国人)
 が日本国民を懲罰するのは果たして正義だろうか。

(注)「人道に対する罪」はニュルンベルク裁判に適用されたが、東京
  裁判では最終的には適用されなかった。--日本はホロコースト
  を行ったわけではない。

著者はかなりIQが高い、のでは、ないか。一理も二理もある、理知的
な書きぶりである。


H.ミアーズ『アメリカの鏡・日本(完全版)』(角川文庫)


「日本は太平洋戦争で負けた」という事実は重い。
しかし、一方、日本は、太平洋戦争(大東亜戦争)でどこと戦って、
どこに負けたのか?
昭和16年12月8日の宣戦布告の対象は、米英である。オランダに
対する宣戦布告は、翌年1月12日である。一方、ポツダム宣言の署
名国は、米英中である。
これらの国々とはきちんとサンフランシスコ講和条約を締結している。

【注】
ソ連は、日ソ中立条約を無視して、一方的に攻撃してきたものである
(独裁者スターリンは、日ロ戦争の仕返しだという趣旨のことを言った)。
サンフランシスコ講和条約で、日本は千島列島や南樺太を放棄した
が、北方四島(歯舞、色丹、国後、択捉)は千島列島には含まれてい
ないというのが日本の主張だ。

また、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)や韓国に負けたわけでは
ない。したがって、昭和40(1965)年の日韓条約は、日韓基本条約
であって、講和条約ではない。


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