人生ブンダバー

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日中戦争  概論と詳論

2023-09-19 05:00:00 | 近現代史

元中央大学教授佐藤元英先生のすばらしい「整理」によれば、

○満洲事変は関東軍の謀略で始まった(昭和6年)。

○日中戦争(盧溝橋事件)は原因不明の発砲という偶発事件で発
 生した(昭和12年)。

○太平洋戦争は御前会議による国家意思決定により始まった(昭
 和16年)。
ということになる。


(戦前の)「昭和史」には「概論」(通史)と「詳論」(細論)
がある。

日本史の高校教科書は、いわば「概論」の代表だ。

最新の「山川の日本史」(『詳説日本史日本史探求』)によれば、
「盧溝橋事件」については、
いったんは現地で停戦協定が成立したが、近衛内閣は軍部の圧力に屈して当初
の不拡大方針
を変更して、兵力を増派して戦線を拡大した。これに対し、国民
政府側も断固たる抗戦の姿勢
をとったので、戦いは当初の日本側の予想をはる
かにこえて
全面戦争に発展した(日中戦争)。8月には上海でも戦闘が始まり
(第2次上海事変)
、戦火は南に広がった。9月には国民党と共産党が再び提携
して
(第2次国共合作)、抗日民族統一戦線を成立させた。日本はつぎつぎと
大軍を投入し
、年末には国民政府の首都南京を占領した。国民政府は南京から
漢口、さらに奥地の重慶に退いてあくまでも抗戦を続けたので、日中戦争は泥
沼のような長期戦となった。

と書かれている。

これは、事実をコンパクトに記述した概論だ。高校教科書では、
その他時代とのバランスもあり、このような書きぶりになるの
だろう。

しかし、アンダーライン部分を中心に「詳論」をいえば、実にさ
まざまな動きがあった。
(ご参考→こちら

高校教科書を離れ、もう少しだけ「詳論」となると、鳥海靖『も
ういちど読む山川日本近代史』では以下のようになる。

1937(昭和12)年7月7日夜半から8日早朝にかけて、北京郊外盧溝橋付近では日
本軍と中国軍の衝突がおこった。現地の日中両軍の間では停戦協定が成立したが、
この盧溝橋事件の報を受けた近衛内閣は、はじめ事件不拡大の方針をとりながら、
陸軍部内や政府部内の強硬派の意見に押されて強硬方針を打ち出し、立憲政友会・
立憲民政党・社会大衆党や、言論機関もこれを支持した。
その結果、陸軍は華北
での軍事行動を拡大し、ついで、同年8月になって華中の上海で中国側による大山
大尉(注:海軍)殺害事件がおきた(第2次上海事変)のを機として、海軍(米内
光政海相)もまた強硬姿勢をとり、日本本土の基地などから出撃した海軍航空部
隊が東シナ海を超えて中国の首都南京を爆撃する
など、日本は中国との全面戦争
に突入した。


(注)アンダーラインはいずれも私がつけたもの。


最近では中国(蒋介石)側の動きの研究も進んでいる。
・満洲事変では、張学良側はほとんど抵抗しなかった。
・日中戦争では、蒋介石は華中で「徹底抗戦」の「積極姿勢」を
 とった。(「強気」対「強気」??)


*第2次上海時事変後、予備役の松井石根は山中湖別荘にいるところ、上海派遣
 軍として出陣を命じられた。
 松井はかねて蒋介石と親交があり、(個人的には)日中提携論者だった。



最新版「山川の日本史」(高校教科書)


「山川の日本史」 2019年版と2023年版


山川「もういちど読む」シリーズ


大杉一雄『日中十五年戦争史』(中公新書)
1996年初版。著者は元日本開発銀行に勤務。日中戦争の詳論およ
び問題点をまとめた「力作」。
ただし、今は「十五年戦争」とは言わない。


左:新書として先駆的な本。右:最新の研究を折り込んだ「決定版」


最新の研究成果を折り込んだ「詳論」


どちらかといえば、いずれも高校教科書より「詳しい」時代史
左から右へ「進化」している。

北岡伸一『日本の近代 政党から軍部へ』(中公文庫)はおすすめ!

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R5(2023)/9/8 午後2時~

中田敦彦YouTube大学がかなりうまく整理されている。
こちら

「マスメディアの責任」について、私のような古い人間は、「田
中角栄金脈問題」(昭和49年)をパッと思い出す。
あの時も、文春と外国の新聞から外国人記者クラブが問題を取り
上げて、問題が大きくなった。
日本の大手新聞は知っていても(?)、それまで報道しなかった。


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