村上しいこさまの猫と家族の本。
それだけで惹かるのだけれど、読んで衝撃を受けた。
4年生のサチの家に、おかあさんが拾った子猫がやってきた。
おとうさんは「うちで飼うのは、むりだからな」と言う。
14歳のみけちゃんがいるので、ピースと名付けた子猫をケージの中で飼うことに。
サチはおかあさんにだっこされたことがない。
おとうさんとおかあさんもしょっちゅうけんか。
「うちの家族には、ふわふわがない。どうしてかな。
わたしもそうだけど、みんなえんりょしながら、つんつんとがってくらしている」
おかあさんは心の病気。おとうさんがこう言う。
「サチが赤ちゃんのときから、だっこすると、どっかへ、ほうりなげてしまいそうな考えに、とらわれちゃう」
なのにおかあさんは病院に行かず、ずっとせつない気持ちでくらしてきた10歳の女の子。
ゆれる気持ちが、痛いくらいに伝わってくる文章がすごい。
描写もすごい。
「そしておかあさんは、バラの花びらのあいだにかくれている、小さなコガネ虫でもさがすように、
じーっと、わたしの目を見て、いった」
「ぬける前の歯のように、心が根っこからグラグラとゆれて、気持ちが悪い」
「みんなえんりょしながら、つんつんとがってくらしている。
知らないのかな。とがったえんぴつのしんは、すぐにおれるって」
ちょっとへんな女の子、しおりちゃんの存在がまたすごい。
いじめの言葉が書かれた紙や机の中に入れられたゴミで三角タワーを作って、いじめに勝つパワースポットを作っちゃうなんて。
ラストは圧巻。
みけちゃんとピースの、サキとお母さんの関係が、すっと近づく瞬間がすごい。
自分の10歳の頃のことも考えながら、この本を読んでいた。
私は家族に愛されてはいたけれど、先生との関係がダメだった。
骨折したあと1ヶ月間、不登校になっていた。
あの時ほどいろいろ考えたことはなかったなと今は思う。
あの頃、この本があったら、もっと早く元気になれたかなとも。
村上しいこさまは、凄みのある作家さん。
バラのお庭や猫のことなど、しいこさま成分がぎゅっと詰まった作品。
発売まもなく重版になったのも納得だ。
しいこさま、ますますのご活躍を!
読んでいて自分の書くものは浅い、浅すぎると思えて。
もっとしっかり「心の動き」を描かねば。
今日もびよよよ〜〜ん (*^ __ ^*)