今日の正午すぎ、晩秋のキノコたちとの出会いを求めて青葉の森の乾いた尾根筋を歩いていた。山にいても電波の届くところで、入ってきたニュースをスマホで確認する癖がある。
画面の導入部、最近入ったニュースやメールのテキストが数行みられるが、「火野正平・・・」のテキストに気が付いて、何だろうと気にしながらyahooニュースを開く。
「腰の不調で体調を崩していた火野正平さん(75)、11月14日逝去。」の報。わが目を疑った。外傷が癒えて、てっきり来春からはNHKBSの「こころ旅」に元気な姿で登場してくるものと信じていた。
何かの間違いかと思ったが、NHKプラスの昼のニュースを見て、中山果奈アナウンサーのアナウンスと火野さんの映像を確認して、「あ、ほんとなんだ」と落胆した。なにかこう、こみ上げてきた。
少し齢は離れているが、同世代であることは間違いないし、春と秋に繰り出される視聴者からのお手紙によって誘われる全国各地の自転車旅のユーモアとペーソスに、この14年間、あるいは一緒に笑い、あるいは一緒に泣いた。
今朝は、朝刊で詩人の谷川俊太郎さんの訃報に接したばかり。まあ、谷川さんは大往生といっていいが、火野さんの場合は、同世代であるからにして、「今日の火野さん、明日は我が身」を実感せざるを得ない、行ってみれば突然死に近いのでショックの度合いが異なる。
でも、今から見れば、晩年の火野さん、NHKのこころ旅によって、あるいは、幸福に人生を終結させることができたのではないだろうか。14年間、全国津々浦々、市井の名もない人たちと出会って笑い、うまいものをみんなで食べ、お手紙のタイムマシンによって千を超える他者との人生を共有できたのだから。
そして、視聴者のわれわれも、番組を通してほんの一部ではあろうが火野さんと時間を共有し幸福感を味わった。
火野さんにはありがとうと言いたいし、幸福な番組を作り上げてきたスタッフにもお礼を言いたい。2024年秋の旅は、代役たちがつつがなく旅してくれているので、どうか最後までやり遂げてほしいし、できれば2011年からの全放映分を何らかの機会に再放送してほしい。NHKさまへ。
ああ、2024年こう来たか・・・火野さんも、谷川さんも、今年の夏はるかカラコルムK2峰で命を落とした中島健郎さんも平出和也さんも野の花のように天真爛漫にこの世を生き抜いた生きた男たち。あこがれずにはいられない。
今日、青葉の森で写してきた野の花を手向けて哀悼をささげるとともに、今宵、今日録画した「こころ旅蔵出しスペシャル202211月佐賀県」と中島さんが登場している「地球トラベラー錦秋の劔岳 撮影日誌」を観ながら酔いつぶれて眠ろう。
その前に、谷川さんの作詞した「死んだ男の残したものは」を聴いて・・・・
小室等さんの歌う、谷川俊太郎作詞・武満徹作曲「死んだ男の残したものは」
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