7月4日(水)
襟裳岬には「風の館」という立派な施設ができ、アザラシの生態を望遠鏡で観察できるようになっていた。これはこれで良く出来ている。
一番見たかったのが襟裳岬の森の恢復状況。市街地近くの遊歩道や百人浜を歩いてみた。
砂嵐の吹きすさぶ荒涼たる風景はどこにもなく蘇った森が広がっていた。人の力の凄さを思った。
僕は50年前に大学の友人たちと初めてここに来た。32年前には高校生たちと来た。明治以後の和人の入植と開発があっという間に原生林を砂漠に変えていた。8月15日に砂嵐に吹き付けられて寒さに震えた。
それがなんということか。地元の昆布漁師さんたちの地道な取り組みがやがて林野庁を動かして松の森を見事に作り上げた。昆布の水揚げも順調に回復しているとか。
日本中の学校の教師たちは一度はここを訪れるべきだ。自然の破壊がいかにあっけなく進行するか。その恢復がどんなに困難か。それでもあきらめる必要はないことを教えてくれる。
未来に生きる人々に伝えていきたい近来の快挙ではないか、そんなふうに思った。
黄金海岸はすっかり変わって立派なトンネルの連続。あの風光は視野から消えてしまった。広尾町美幌で石澤宗一さんを訪ねた。32年前、池商の生徒たちと三親牧場にひと夏を過ごしたとき、昆布干しなどを体験させてもらった。この時の縁で貴子母子をずうっと気にかけて来てくれたと聞いている。
80を過ぎた宗一さんは残念ながら入院中だったが奥さんのはなさんが訪問を喜んでくれた。宗一さんは近年になって昆布漁からは引退し、好きな旅行を楽しんでおられる、とか。健康が恢復したら川越にも来て下さるかもしれない。
昆布干場に上がっていって驚いた。その広いこと。
石澤さんの後輩漁師さんが相手をしてくれた。今年の昆布漁は15日から始まるという。