15日の国会で北朝鮮に渡った日本人妻問題が取り上げられ日本政府の課題として取り組んでいくことが確認されました。すでに半世紀が経ち、大部分の方々がなくなっていますが、日本国民の名誉にかけても一日も早い帰国を実現しなければなりません。
北朝鮮日本人妻の帰国実現に全力 中井拉致問題担当相
中井洽拉致問題担当相は15日午前の参院予算委員会で、北朝鮮に渡った日本人妻について「あらゆる機会に、この問題を世界に認識してもらい、一日も早く帰国がかなうよう精いっぱい努力する」と述べた。
中井氏は日本人妻の状況に関し「望んで北朝鮮に渡ったとはいえ、大変苦しい、抑圧された状況下で生活している。収容所に収監された人の人生は想像を絶する」との認識を強調。
同時に「存命者は100人ぐらいと承知している。鳩山由紀夫首相からは、北朝鮮にいる日本人生存者をすべて救い出すよう指示されている」と述べた。
出典
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031501000287.html
昨年12月、移民政策研究所が鳩山首相あてに要請を行い、新潟で追悼法要を行ってから3カ月。私たちの動きも力になったのかも知れません。
帰ってくる人々を喜んで受け入れる体制を整え、国民が力を合わせて政府の後押しをしなければなりません。これらの人々に残された日々は少ないのです。
首相あての要請文
移民政策研究所坂中英徳代表は、2009年12月11日、内閣府に中井洽拉致問題担当相を訪ね、日本人妻の早期帰国を北朝鮮政府との外交問題にするよう要請しました。
要請文
内閣総理大臣 鳩山由紀夫様
「日本人妻」の帰国を日朝の外交課題に
1959年12月14日、975人の在日朝鮮人および日本人妻らを乗せた第一次帰国船が新潟港から北朝鮮の清津港へ向け出港しました。
その日から1984年まで続く北朝鮮帰還事業で総計9万3340人に及ぶ人々が日本海を渡りました。
あれから50年、本国に帰った人たちが日本に次々と戻ってくるという前代未聞の出来事が起きています。現在、6人の日本人妻を含む、約200人の脱北帰国者が日本に入国しています。帰国者たちが移住した先は人間の住める国ではなかったのです。
帰国者たちは、北朝鮮政府から最下層の身分に指定され、特別監視の下に置かれました。いわゆる「帰国者狩り」が行われた1966年から1980年代初めにかけての期間だけでも、強制収容所で亡くなった人や処刑された人は相当な数に達します。
日本国籍を持っているのに北朝鮮公民とされ、日本に帰国することが許されなかった日本人妻(1831人)のほとんどは、祖国に帰る願いがかなわず無念の死を余儀なくされました。亡くなった日本人妻は、「私が死んだら、頭を日本海のほうに向けて埋葬してほしい」と言い残したと聞いています。日本へ帰ることがかなわないとわかると、せめて遺体は祖国の方角へ向けて埋めてほしいと願ったのです。
日本に残った朝鮮人も帰国運動の犠牲者です。肉親が本国に囚われの身となり、帰国者を「人質」にした北朝鮮政府から「身代金を送れ」とか「日本人拉致に協力しろ」とかの脅迫を受けたからです。北朝鮮への怨念を抱えたまま「憤死」した在日朝鮮人は万単位の数にのぼります。
以上に述べた膨大な数の死者たちの霊はいまだとむらわれていません。
一般社団法人移民政策研究所人道移民支援センターは、北朝鮮帰還事業開始から50年目を期して、2009年12月14日、新潟港において「『あの日を忘れない』新潟港追悼集会」をとりおこないます。追悼集会においては、帰国運動の犠牲者の霊を慰める追悼法要をいとなむとともに、今も北朝鮮に幽閉されている帰国者全員の解放をめざすことを誓います。
北朝鮮には今も、100人以上の日本人妻が生活していると推定されます。70歳代から80歳代の日本人妻は全員、「生きていさえすれば日本政府が必ず助けてくれる」と信じています。「死ぬ前に日本の土を踏みたい」と切実な胸のうちを語っています。
私は、行政官として在日朝鮮人問題と取り組み、いま人道移民支援センター代表として日本に帰って来た帰国者の定住支援を行っています。その立場から日本政府に緊急提言があります。現在も北朝鮮に軟禁されている帰国者全員を救出するため、まず「日本人妻」の帰国を日朝間の外交課題にあげていただきたい。
この問題を日朝交渉で取り上げれば、膠着状態に陥った日朝関係を打開する糸口になるだろうと考えています。人質外交にたけた北朝鮮政府首脳は「日本人妻」を対日外交の切り札として温存してきたので、この話に乗ってくると見ています。
今日の世界では、自国民、外国人を問わず、すべての人の出国の自由は普遍的な権利とされています。しかし、北朝鮮は出国の自由を認めていない国であります。
国交の正常化と人の交流の正常化は不可分のものです。したがって、わが国が北朝鮮との国交正常化交渉を進めるに当たっては、まず在北朝鮮のすべての日本人の出国の保障を前提条件とすべきです。そして、北朝鮮が日本人の出国を完全に認める時、日本人拉致の問題も日本人妻の問題もすべて解決します。
世界は北朝鮮の日本人拉致を指弾しています。北朝鮮が50年間も日本人妻の出国をはばんできたことについても、国際社会は非難を浴びせるに違いありません。
存命の日本人妻に残された時間はわずかしかありません。日本政府は一刻も早い日本人妻の解放・帰国を求めるべきです。これは緊急を要する邦人保護問題なのです。
平成二十一年十二月十一日
一般社団法人移民政策研究所所長 坂中英徳
「川越だより」・『新潟港 2009年12月14日』
http://blog.goo.ne.jp/keisukelap/d/20091215