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川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

丸木俊さん 怒りと祈り

2012-04-20 08:27:15 | 映画  音楽 美術など

丸木美術館の理事でもあった吉武輝子さんが亡くなられた。学芸員の岡村さんのブログで追悼記事を読んだ。

その中で吉武さんがある集会でほら貝を吹く俊さんを追想する文章が紹介されている。丸木位里と丸木俊は水と油に例えられてきたが、俊さんが二人の関係についてしゃべっているところが「面白い」。

 「みなさん、位里と私のことをおしどり夫婦だとおっしゃる。でも本当は仇敵同士。原爆の図を二人で三十年近く描いてきたけれど、彼は日本画、私は洋画。手法の違う二人が共同制作をするのだから当然ぶつかり合うものがある。絵のほうは歳月を重ねるうちに、日本画、洋画を融合させた新分野を作り出していくことができた。
 でも、位里の女性観は終始一貫変わらなかった。位里は絵かきであり続けたが、私は家事や生活費稼ぎに時間を取られすぎた。私が絵に打ち込みすぎると、位里はぐんと遠ざかる。そして必ず女の影がちらつく。若くして夫に死別した三岸節子さんを、うらやましいと思ったことが何回かあった」
 七歳先輩の洋画家の先駆者三岸節子の伝記を書きたいと私が言ったとき、ふと真情を吐露した丸木さんの言葉が鮮明に蘇ってきた。

 旧姓赤松俊子が十二歳年上の丸木位里と結婚したのは四一年のこと。位里は三度目の結婚だった。俊は北海道生まれ、位里は広島生まれ。原爆投下直後に位里の両親の安否を求めて広島を訪れ、悲惨な光景を目の当たりにしたのが、夫婦で十五部の大作「原爆の図」を描き続けるきっかけだった。
 人の命を無惨に奪う戦争への怒りと、二度と同じ過ちをくり返すことがないようにとの祈りとを、俊は塗り込めていったのだろう。そして同時に、戦前と変わらぬ夫位里の女性観に対する怒りとよきかかわりへの祈りをも。祈りはかなわなかった。それを怒り、また祈る。その切々たる思いがほら貝の音となって響き渡ったのだろう。今も耳を澄ますとあの日のほら貝の音が聞こえてくる。
 だがこの水と油のような男女が夫婦にならなかったら、「原爆の図」は誕生することはなかったのである。 

出典●http://fine.ap.teacup.com/applet/maruki-g/msgcate3/archive 

俊さんがふくほら貝の音を僕も聞いたことがあるがこんな思いが込められていたとは‥。

丸木美術館では「丸木俊 人間を描く」展が開催中である。30日にはぼくのガン友夫妻が見に来てくれるという。案内がてらもう一度鑑賞してみようと思う。

 

丸木俊さん 足跡たどる 原爆の図美術館 作品100点超並ぶ(2012年4月1日東京新聞)

モスクワ、南洋群島、そして広島。人間を描き続けた丸木俊さんの画業を、ゆかりの人の作品とともにたどる展示=東松山市で

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 夫と共作した「原爆の図」で知られる洋画家・故丸木俊さんの創作活動を百点以上の作品で振り返る「生誕100年 丸木俊展」が原爆の図丸木美術館で開かれている。夫の日本画家・故丸木位里さんの作品のほか、俊さんに師事した絵本作家いわさきちひろさんの作品十点も展示して丸木夫妻から受けた影響も探る。五月十九日まで。 (中里宏)

 俊さんは一九一二年、北海道生まれ。女子美術専門学校(現女子美術大)を卒業後、外交官の子どもの家庭教師としてモスクワに滞在したり、日本統治下にあった南洋群島を回ったりしながら創作活動を続けた。四一年に位里さんと結婚。四五年八月、原爆投下直後の広島市に入り、後に共同制作した「原爆の図」で世界に知られることになった。

 同美術館の岡村幸宣学芸員は俊さんの画業を「人間の本質を見つめ、鋭い観察眼と卓抜した技量で人間を描き続けた」という。

 ゴーギャンの絵を見て感動したことがきっかけで訪れた南洋群島では、色使いにゴーギャンの影響を感じさせる作品も残した。労働争議を題材にした「広島製鋼事件によせて」(四九年)や、六〇年安保闘争で亡くなった樺美智子さんにささげた「犠牲者」(六一年)など社会的な主題を持つ作品も多い。

 四六年から十七年にわたって丸木夫妻と交流した、いわさきちひろさんの作品には一室が設けられ、ベトナム戦争下の子どもたちを描いた絵本「戦火のなかの子どもたち」や広島で被爆した子どもの手記に絵を付けた「わたしがちいさかったときに」などから十点の復元作品が展示されている。

 岡村さんは「いわさきちひろの初期のデッサンは丸木俊によく似ている。画家としての基礎技術を俊から学び、『にじみ』や『ぼかし』など水墨画の技法は位里の影響を受けた」と話している。

 同美術館は月曜休館(四月二十四日~五月六日は無休)。問い合わせは同美術館=電0493(22)3266=へ。

 
 

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