『気まぐれ天使』(1976年10月〜
1977年10月)
大手下着メーカー「プリンス」の
宣伝部の新任宣伝部長南條友江
(酒井和歌子)はバイク通勤をして
いる。
同社宣伝部に勤めながら童話作家
になる夢を持っている加茂忍(石立
鉄男)は、大金を貯めなければ婚約
者(大原麗子)と結婚できない条
件があり、サラリーマンを続けて
いるが、その彼の周囲で起こる
ドタバタ騒動の物語。
なぜか、途中から、大原麗子では
なく酒井和歌子にマドンナ役が
スイッチしたドラマ。悠木千帆
(樹木希林)と坪田直子の存在も
不思議なキャストだった。
冴えないサラリーマン忍の上司
南條友江はヤマハRD350に乗っ
ている。
1976年当時の新設された中型二輪
免許の教習所バイクはこれだった。
2ストだ。
2スト車で一本橋をやる。確か当時
は卒検にはないが、教習では波状
路もあった。
その数十年後に免許制度が改正
されて中型二輪免許は極めて簡単に
なったと聞く。1970年代は車体引
き起こしには不動車が使われ、
タンクには砂が満タンに仕込
まれていた。
また、一本橋の通過速度審査規定
も今よりずっと長いタイム規定だ
った。
内容を比較してみると、ほぼ現在
の大型二輪免許がかつての中型
二輪免許と同格の技能審査内容の
ように見える。
1975年から開始された限定解除
免許試験は「合格させない為の
試験」であるため、現在の制度と
態様とまるで異なっていた。
服装でまず受験者を判断する。
白いジェットヘルメットに黒い
カカト付きブーツは「限定解除法
第一条」とまで揶揄される程だっ
た。また、受験者の言葉違いも
審査される。
警察が強権的であった時代だ。
車両を停止させて免許提示の時
に現代のように「お急ぎのところ
おそれいりますが」なんてこと
は間違っても警官は言わない。
「免許証!おたくどこまで行くん
だ?」
だ。全てにおいて横柄だし権力を
カサに着ていた。警察官が国民に
「てめえ」「この野郎」とか言う
のもごく日常的だった。
警察官に対して少しでも反抗的
な言葉遣いをすると、それだけ
で取締り対象として扱われた時
代だった。
そうした中で、自動二輪の免許を
それまでの小型自動二輪(原付)・
自動二輪から小型自動二輪・
自動二輪限定あり・自動二輪限定
無しという3種に分けて、さらに
自動二輪限定無しは教習所では
取得できない、という世にも
奇妙な珍法ができた。お上は
やりたい放題の時代だった。
しかし、1981年に始まる全国3
ない運動以前の時代でも、二輪
に乗りたい人たちはどんどこ
乗った。
空前絶後の日本の戦後バイク
ブームは1980年代からだが、
その序章は1970年代中期には
始まっていた。
意外と思うかもしれないが、
バイクブームは50ccの原付の
一般普及により支えられていた。
主婦層が誰でも買い物バイクを
利用し始めたのが大きかった。
1970年代、ホンダのラッタッタ
とヤマハのパッソルが時代を変
えたといえる。
南條友江はやがてドゥカティに
乗り換える。他にも乗っていた
気もする。ZⅡにも乗っていた
ようにも思えるが、記憶違いか
も知れない。
部下の森田健作を後ろに乗せる
友江役の酒井和歌子。
このドラマでの酒井和歌子さん
はとてもカッコ良かった。
バイク走行シーンの吹き替えは、
多分堀のロコさんあたりだ
ろうなあ。