母の包丁を研ぐ。
「武峰作」。かなり古い。
土佐刃物は安価で切れ味鋭い作
が多い。
邑田武峰(1939年生)は15才で
土佐の打刃物鍛冶の戸梶一族に
入門したという。狩猟刀や包丁
は切れ味で有名だ。
武峰は切れ味が良く「カミソリ
武峰」の異名を持っている。
覇気がある字体。
金剛砥2種と大村砥で押して
姿を決めていく。
鎬線は荒砥の段階で出す。
天草砥でラインを整える。
表面に鎚目によるうねりがあるの
で、なかなかラインが決まらない。
うねりを完全に除去するほどに
真っ平に研いだら、薄い地鉄が
なくなってしまう可能性が高い。
人造砥#1000と#1300で砥石目
を整える。
裏も黒打ちの鎚目が残っている
ため、これ以上平面を出すと
地鉄が無くなってしまうので、
ここらあたりで止めておく。
あとは砥石目を整えるだけだ。
鎬はこれ以上立てられない。
切先はすでに地鉄が無くなって
鋼が大分露出し、日本刀の焼刃
の「返り」のように見えてきた。
天然ではなく人造#6000で刃を
合わせて、試し切りをしてみた。
最初、ティッシュを丸めて刃を
あてたが、あまりの切れ味で手
を切りそうになった。カミソリ
のような切れ味だ。
今まで手にした包丁で、やはり
武峰が一番切れる。気持ち悪い
程の切れ味。
無抵抗でヌーッと切れる感じで
はなく、意思を持っているかの
ように勝手に切り進んで行く。
この作は「カミソリ」の名の通
りだ。
刃長さ四寸七分。
使い勝手がとてもよい長さ。
刀身は相当使い込まれていたが、
これは切れる。
良い刃物。
作者は昭和14年生まれ。
これはうちの普段使いの包丁。
母は包丁マニアで、数十口を
持っている。私は10口程だが、
当然、両方合わせると本数に
見合った研ぎの回数となって
くる。
常に包丁研いでいる感じ(笑