もろに西部劇の現代版。
民間人から金を巻き上げる
ために暗躍する一丸となった
悪徳警官たち、判事、街の公
的機関全体。
自分らの利益のためには人が
死のうと知ったこっちゃない、
というアメリカの田舎町。
そこに一人の元海兵隊員がや
ってくる。刑務所に送られる
従弟の保釈金を持って。
だが、彼も町の警官に不当に
保釈金の大金を盗られてしま
う。
彼はやがてこの町全体が権力
者そのものが犯罪で成り立っ
ている事を知る。
REBEL RIDGE=「反逆者の稜
線」という原題の意味は最後
の最後に判明するというクラ
イムアクションスリラー映画。
だが、ラストシーンにのみ
離反者たちの反逆の総意とし
ての「正義」が登場するが、
こうした正義に向かう心は現
実にはアメリカには無い虚飾
だと強く感じる。
現実世界はアメリカの方式は
「最後に正義は勝つ」ではな
く、「勝った者が正義だ」で
あるし、英雄が不正を糾して
弱者を救うという展開にはな
らないし、なっていない。
それがアメリカの現実だ。
そして、そうした世界を地球
規模で展開しようとしている
国がアメリカだ。
この作品は、映画作品として
は古典的ハリウッド西部劇と
全く同じ手法での映像表現だ
が、現代にも実在するアメリ
カ合衆国の現実問題(作品で
描かれたような現実が実在
するという問題)を鋭くえぐ
ってはいない。
ラストはお決まりの偽善的な
疑似「正義」によって救われ
るという現実離れした展開で
エンドになるからだ。
全編を通して映像の表現描写
は秀逸だが、筋の根幹におい
てこの作品は極めて甘い。
こういうラスト展開に喝采を
送るとしたら、それはアメリ
カ独特の予定調和的疑似正義
の欺瞞に視聴者が絡めとられ
ているという証拠だ。
そうした精神性こそが、これ
らの悪徳警官や判事や権力者
の存在を許す事になる。
視聴者側の民度、危機意識の
レベルが問われる作品。
この作品は「どうしてそうい
う悪の存在に人は賛同し支持
し、同一行動を取るのか」と
いう点には全くメスを入れて
いない。
かといって視聴者にその根底
基盤の根本から原因を考えさ
せるような材料も提供しない。
つまり、無言の示唆さえも無
い。
テーマは良いが、作りが甘い
のである。