映画『幸せの黄色いハンカチ』
本作において、このシーンが
一番私はグッとくる。
パイになって娑婆に出た時に
は、まずビール。
これはかなり痺れる。
私個人はラーメン屋(今のよう
なラーメン専門店は日本には
屋台しか存在しなかった。町
の中華屋は定食屋のようなも
のだった。定食350円の時代)
のビールのコップが一番ビール
がおいしく感じる。
日本酒の常温ならばワンカッ
プ大関の容器で飲むのが一番、
というのに似て。
気取った容器ではなく、直球
一本勝負のようで、私は気持
ちよくその酒を飲める。
至高なのだ。
健さんがふらりと入った店で
頼んで出て来たビールはサッ
ポロだ。
男は黙ってサッポロビールの
サッポロビール赤星ラガー。
そして、場末のラーメン屋
(定食屋)のビールのコップ。
時の流れを噛みしめる島勇作。
高倉健、最高の演技である。
ビールを頼み、正油ラーメン
とカツ丼を頼む。
そして、それを「生きている」
感をたっぷりに出しながら飲
み、食う。
高倉健さんはこのシーンの撮
影のために、二日間何も食べ
ていなかったという逸話があ
る。プロの役者魂は映像に帰
結した。
ただ、健さんにしては珍しく
ビールのシーンでOKがなか
なか出ず、ビールでお腹一杯
になっちゃいましてね、と後
年語っていた。
そして、OKが出て本編に採用
されたテイクは映画史上最高
のシーンとして伝説となった。
監督は山田洋次。
本作の他の多くの動画が動画
サイトにアップされようとも、
松竹やサイト運営者は放置し
ているが、この珠玉の名シー
ンのみは動画をアップされた
ら即著作権警告で削除をする。
松田聖子のスタジオ生放送の
動画の投稿削除のいたちごっ
こと同じだ。
ただ、本当に本作品のこの健
さんが出所後に初めて場末の
町の食堂で外食をして「ビー
ルください」とビールを頼み、
「それと正油ラーメン(醤油
ラーメンではない)とカツ丼」
と頼むシーンは名シーンだ。
ビールはサッポロの赤星。
今では少なくなったが、かつ
ては定食屋のビールの代表は
これだった。全国どこでも。
そこがまた本映画作品は1970
年代末期の時代を克明に映し
出している。
最初のビール一杯を両手で飲
みほして名状しがたい表情で
味わう高倉健の演技は、日本
映画のレジェンドシーンとし
て歴史に残り、今も多くの
人々に語り継がれている。
私はこのシーンを何度も何度
も観て、このシーンがあった
がゆえに、この健さんが飲ん
だ時のグラスと同じ物を入手
し、家でビールを飲む時には
それでと決めている。
当時は非売品。
今では1968年製のこのグラス
がネットで探せば手に入る。
「サッポロ☆ビール
リボンシトロン」
のグラスだ。
1980年代あたりまではごく
普通に学生コンパの宴会場
などでも使われていた。
入手して楽しまれる方は、非
常に割れやすいのでご注意を。
私もこれまで不注意で2度割っ
た。
ちょっとぶつけただけで簡単
にパリーンと割れる。
ワンカップ大関のグラスのよ
うに頑丈ではない。
ワンカップ大関のグラスもラ
ベルを剥がして、よくドライ
ブインや食堂の水コップとし
て使われていたが、最近はあ
まりみない。
私は家では昭和の食堂と同じ
くワンカップ大関のコップも
水コップとして使っている。