渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

14C28N鋼を研ぐ

2020年10月12日 | open



リアルスチール社ブッシュクラフト
プラスのナイフを研ぐ。
鋼材はスウェーデンのサンドヴィ
ック社の新SUS鋼の14C28Nだ。
実用硬度は55〜62と幅が広い。

簡単な鋼材だ。
サッと即刃が付く。
任意の刃を好きなように付けら
れる。






0.1ミリ以内で小刃の中にさらに
細い帯のプログレ研ぎを施して、
漸次的摩擦係数の可変を実現さ
せている研ぎ。
砥石はシャプトン1000番と本山
アイサである。


使い易く、非常に素直で研ぎ易
い鋼材だ。
この鋼材が研ぎにくいと思うと
したら、それは研ぎの技術が極
めて低いだけの事だ。この鋼材
はすぐに研げる。
研ぎ上げ後は、自重で新聞紙1枚
がスーッと切れる。


同じリアルスチール社のガルダ
リクもかなり木を削ったので研
いだ。


こちらは9Cr14MoVという鋼材
で中国製だ。大陸人民共和国の
ヤンドン・グランドシャープ工
業が製造している鋼材で、日本
の日立金属のATS-34とほぼ同
じ成分製造されている。


これまた簡単に研げる。
サッと刃が付く。鋼材は悪くない。
ロックウェルで60は出ていそうだ。


ただし、研いだ感触ではATS-34
よりも靭性が劣るような気がす
る。
微細刃こぼれとか起きそうな雰
囲気だ。


こちらもプログレ研ぎにしてある。
ただし、ブッシュクラフトプラス
よりも幅広い小刃を作り、その部
分をハマグリに成形させた。この
ナイフ本体がフラットな平地の
グラインドだからだ。


リアルスチール社が使う鋼材は
14C28Nも9Cr14MoVも、どち
らもとても研ぎ易い。
良い鋼材だ。
よほど下手くそで未熟な研ぎの
腕でない限り、初心者でもサッ
と研ぎ上げる事ができるだろう。
但し、砥石は平面をビシッと出
していないと刃物は研げない。
私がコンマ単位の幅の小刃の中
に幾筋もの研ぎ面を作れるのは、
砥石をビシッとまっ平に都度仕
上げているからだ。

私はビリヤードのキューのタッ
プもカッターの刃のみで旋盤と
同精度で切り出す事ができるが、
それも刃物の研ぎもさしたるこ
とではない。
絶対に外してはならないキモを
知っていて、それを実行してい
るだけだ。
コツとか特殊技法とか秘伝とか
離れ技とかではない。誰でもで
きる。
できないのは、それは単に技術
がそこに至っていないだけの事
であり、きちんとやればどなた
でも出来る。
繰り返すが、出来ないのは、そ
れは切りにしても研ぎにしても、
重要なポイントを知らない、見
つめようとしないからだ。
やれば出来る。誰でも。研ぎも
切りも超難易度のウルトラC(今
は体操はEくらい?)ではないの
だから。
出来ないのは鋼材のせいではない。
鋼材のせいにしている時点で、
永久に研ぎは出来ない。
自分の技術が全く至らない事を
自覚せずに自分以外に原因を見
いだそうとしているからだ。
映画『ハスラー』では、そうし
た負けの言い訳を探している人
間の事をルーザー=落伍者と呼
んだ。
まず、己が出来ている事、まだ
出来ていない事を自分に厳しく
冷徹に正確に客観的に識別でき
なければ、その後の課題も見つ
けられなければ、方針も方策も
立てられない。
なぜだ、どうしてだ、どうやれ
ば、ということを一心不乱に常
に考えていなければ、技系のも
のは拓けない。

研ぎや切りの正確性の実現なん
ていうのは、誰でも出来ます。
同じ人間がやるのですから。
日本刀での切りや斬りも然り。
切るのなんてのは簡単です。
剣技で難しいのは対人戦闘です。
物を刀で切るのは簡単。

彫刻等も、切ったり彫ったりす
るのは簡単です。
彫刻などで難しいのは、芸術的
な作品としてまとめ上げて作る
事。
切ったり研いだりは、プッシュ
ボタンを押すようなもので、さ
したることではない。
難しい事案はその先にあります。

刃物は研ぎが出来ないと使用が
始まりません。
よく切れる刃物でも、使えばそ
のうちどんな刃物でも切れなく
なって来るのですから。
そして、研ぎというのは難しく
はない。
難しいのは、切れるように研ぐ
事ではなく、「狙った切り味」
を的確にピタリと実現させる事
です。切れ味ではなく切り味。
良く切れるように研ぐというの
は誰でも出来る。

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