稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

剣道初心者への不適切な指導について

2018年10月27日 | 剣道・剣術

(写真は本文とは関係がありません)

最近は初心者や中級者の指導にたずさわる事が多くなり、
少ない稽古時間の間にいかに効率よく指導を行うか、
指導内容や方法についてあれこれ考えることが多くなっている。

人によって理解力の差や得て不得手、すでについてしまったクセがあるので、
人それぞれに応じた個別指導が必要で、試行錯誤しながら実施している。

たびたび、初心者に対して不適切な指導を見かける。
自分よりもはるかに年配古参の先生のために異論も言えない。
ここで「覚え書き」として、少し憂さ晴らしをしておくことにする。

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1)中段の構え
中段の構えは「一足一刀の間合において、
剣先の延長が相手の両目の中心または左目の方向である」が正しい。
初心者にはまずこの中段の構えを第一に教えなければならない。

しかしながら「試合では剣先を合わせたら相手に動きを察知される」からと、
「剣先は水月に向けたり、相手の中心から外して構えろ」と言う指導者がいる。

審査では「構え」も重要な要素である。
変な構えはさせるべきでは無い。
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2)発声(声・気合)
触刃交刃より先では発声しないほうが良い。息を吸う時に隙が出るからである。

しかし、初心者や中級者に「打ち間に入る時には声を出すべし」と教えてしまう。
触刃、交刃から、一足一刀の間に入り、そこから「ヤア!」と発声しながら、
剣先を相手の胸や咽喉元に付けて一歩入り、そこから面を打ってしまうのである。
理由は「相手を驚かし、居付いたところを打つ」のだそうだ。

理由はわかるが初心者に教えるべきでは無い。
よほどの力量の差が無ければそのような攻めは通じないからだ。
むしろ「隙」になることを教えるべきだ。
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3)打ったあとの振り返り方
打ったあとは、抜けた後、出来るだけ小さくクルリと回って相手に正対して構える。
このため、回る際には竹刀を垂直に立てて回るとスムーズに回り易い。

しかし「打ったそのままの姿勢のまま回れ」と指導してしまう。
(左足を軸にして回れとも言っていたが、さすがにそれは勘違いだと思う)
そのままの姿勢(竹刀を伸ばしたまま)では、大回りになるし遅いし不恰好である。

なお、回るときは右足を軸にしてすばやく一瞬で回る。
足を踏み変えて左足を大きく出しながら右足軸でクルリと回るのがコツである。
振り返ったら足幅が大きくなっているので出た右足を引いて構え直すと見栄えが良い。
(この時には遠間になっていること、そして右足左足と前に出て間合いを詰めるのだ)
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4)素振りで剣先を水平より下げないということ
基本は振りかぶった竹刀(木刀)は水平より下に下げないのが基本である。
しかし、大素振りの時など背中に竹刀が当たるまで振りかぶる場合がある。
肩の可動域を大きくし、力強い打ちを生み出すためのものだ。
こういった、いわゆる「大素振り」の時に文句を言われても困るのである。

同様に、正面打ちで、わざと大きく伸びやかに打つ稽古もする。
この時も伸びやかさが大事なので「水平より下がっても良い」としている。
わかってやっている事なので文句は言わないで欲しい。
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5)打ち込むときに「膝から前に出ろ」と教えること
右足が上に上がって打ち込むクセを直すために「膝から前に」という事はある。
しかし膝から前に出た結果、膝から下が遅れるため、
結果として右足が蹴り足になってしまうクセが付いてしまうことがある。

右足は、つま先が床を滑るように前に出すのが正しい。
床すれすれに前に出て、最後に前に倒れこむ身体を支えるため、
最小限に右足を上げて「トン」と床を踏むのである。
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6)遠い間合いから打ち込ませること(10月29日追記)
初心者ではあまり無いが、中級以上の者に遠い間合いから打ち込ませる。
つまり一足一刀の間から一歩入って打つのが打ち間なのに、
交刃の間、あるいは触刃の間から「そこから打て」と言われる。
無理やり打とうとすると身体が前傾し、捻じれ、腕が伸びきった打ちになる。
本人が「いくらなんでもこりゃ無理」と思うと継ぎ足や歩み足で打つクセがつく。
継ぎ足や歩み足を使うクセがつくとまた叱られる。

結局は自分で自分の打ち間がサッパリわからなくなり、
自信が無いまま間合いにジリジリ入って行って、
「相手が動いたら打つ」という安易な剣道に陥ってしまう。

「遠間で打て」は、指導者本人は打てないのに平気で言う場合が多い。
打てる見本が完全な継ぎ足だったという例はあまりに多い。

打てる指導者もいるにはいるが、そんな例は特別で、
それはそれで指導者の自己満足でしか無いと思うのだ。

姿勢正しく、自分の打ち間から、しっかり打てるようになってから、
徐々に打てる間合いを広げていくべきである。
焦らしたら剣道がイヤになる。
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いったん付いた悪癖はなかなか直らないものである。

以上、1)から 6)まで、
いずれも間違いでは無いが、時と場合と、人(レベル)を見て、
状況に応じて使い分けしなければならないと問題である。

(この項は加筆訂正しつつあります・悪しからず)
コメント
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