く~にゃん雑記帳

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<センダン(栴檀)> 可憐な淡紫色の小花がびっしり 遠目にはまるで藤の花!

2013年06月04日 | 花の四季

【別名「オウチ(楝)」万葉集にも、「獄門の木」の異名も】

 センダン科の落葉高木で高さが20~30mにもなる。主に西日本の海岸近くの暖地に自生し、初夏、淡紫色の小花をびっしり付ける。花びらは5枚で細長く、まるで小さな風車。秋になると黄色の実を鈴なりに付け、落葉した後も枝に残る。その姿から「金鈴子」と呼ばれる。材は淡褐色で光沢があり加工しやすいため、建築や家具、下駄、木魚、楽器材(筑前琵琶)などに幅広く利用されてきた。果実や樹皮は「苦楝子(くれんし)」「苦楝皮」と呼ばれ、整腸やひび・あかぎれ、虫下しなどの効能がある。

 別名「オウチ(楝)」。古くは「アフチ」と呼ばれ万葉集にも4首詠まれている。「妹が見し楝(あふち)の花は散りぬべし わが泣く涙いまだ干なくに」。筑前国守として赴任した山上憶良は奈良の都で亡くなった妻をしのんでこう詠んだ。大伴家持は「ほととぎす楝の枝に行きて居ば 花は散らむな玉と見るまで」。唱歌「夏は来ぬ」(佐佐木信綱作詞)の4番目にも「楝(オウチ)散る川辺の宿の門遠く……」と歌われる。

 古くから親しまれてきた樹木だが、センダンには一方で「獄門の木」「さらし首の木」といった怖い異名も付けられている。壇ノ浦で生け捕りにされた平家の大将、平宗盛と清宗の父子は斬首処刑された後、その首が京都の獄門の前にあったオウチの木に掛けられた……。平家物語にはこんなくだりがある。オウチはさらし首を置く台にも必ず用いられたといわれる。このためセンダンは長く〝忌木〟として敬遠されてきた。

 センダンには2種類の樹木がある。日本に自生するこの落葉高木と東南アジア原産の常緑高木。「栴檀は双葉より芳し」の栴檀は後者のビャクダン科に属す白檀を指す。仏典「観仏三昧海経」の中の言葉からこの諺が生まれた。白檀はインドでは古くから香木として使われ、サンスクリット名の「チャンダナ」が漢名で「センダン(栴檀)」に訳された。一方、日本のアフチ・オウチがセンダンと呼ばれるようになったのは江戸初期ともいわれる。新井白石は「東雅」(1717年)の中で「楝は即ち苦楝、その子は金鈴子といふ。俗にセンダンといふ是なり」と記す。

 センダンの中には国の天然記念物に指定されている巨樹が2つある。香川県の「琴平町の大センダン」と徳島県阿波町の「野神の大センダン」。樹齢はいずれも300年を超える。福井県鯖江市にある照臨寺のセンダンは2年前、市から県の天然記念物に格上げされた。福井県はセンダンの分布域のほぼ北限に当たるという。

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