く~にゃん雑記帳

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<ムジークフェストなら③> 「奇跡のソプラノ アイリカ・クリシャール」

2013年06月27日 | 音楽

【抑揚の利いた豊かな声量、ピアニッシモの繊細な響き!】

 「奇跡のソプラノ アイリカ・クリシャールが古都で奏でるロマン派の調べ」と題したソプラノ演奏会が26日、奈良市の「なら100年会館」で開かれた。ロマン派後期のポーランドの作曲家シマノフスキの歌曲「12の歌」と、比較的よく知られたポピュラーな楽曲の2部構成。クリシャールはビロードのような軟らかい繊細さと張りのある力強さを織り交ぜて抑揚の利いた歌唱を披露、「奇跡のソプラノ」の形容が伊達ではないことを証明した。

 

 クリシャールは1983年、北ドイツ・東フリースラント生まれ。2002年、デトモルト国立音大声楽科に入るが、いったん音楽の道を断念して哲学専門大学に入学。しかし、05年にミュンヘンで指揮者やドイツ歌曲のピアノ伴奏者として活躍していた小林春仁氏との出会いを機に歌の世界に復帰した。以来、日本各地で約150回のコンサートを開いており、09年には福島で「クリシャール国際音楽祭」を始めた。11年の東日本大震災の際にはドイツ各地でチャリティー・コンサートを開くなど被災地支援に奔走した。

 ピアノ伴奏は1965年ドイツ・アウグスブルク生まれのベルンハルト・ヴュンシュ。ヨーロッパを中心に指揮者としても活躍しており、現在ミンスク放送管弦楽団首席客員指揮者を務める。昨年9月にはシマノフスキの「12の歌」(1907年作曲)全曲をクリシャールと共に世界で初めて録音し、その新作CDが評判を呼んだ。

 ヴュンシュは「12の歌」演奏に先立ち、作品の特徴についてこう解説した。「長調か短調か分からない不思議な楽曲。短い中に多様なリズムとハーモニーが凝縮している」。1曲目の「高き山に登りて」から、一気にクリシャールの世界に引き込まれた。艶やかな高音、広い音域。とりわけ7曲目「雨のあとで」や9曲目「雪が熱き胸をしずめて」は繊細なピアニッシモの響きが息をのむほどの美しさだった。

 第2部はシューベルトの「グレートヒェンのつむぎ歌」「セレナード」「魔王」からスタート。「セレナード」では切々たる思いを情感豊かに歌い上げた。次いで日本の「荒城の月」「ならやま」「ふるさと」、そして山田耕筰の「たゝえよ、しらべよ、歌ひつれよ」。もっと日本の唱歌などを聴いてみたいと思わせる胸に染みる歌唱だった。この後、リストの「夢に来よ」、シューマンの「献呈」「月の夜」「美しき異郷」、リヒャルト・シュトラウスの「万霊節」「チェチーリア」と続いた。アンコールはプッチーニ「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」。

 クリシャールは1曲歌い終わるたびに下を向いて精神を集中し、ピアノのヴュンシュは顔が上がるのを合図に、次の曲を弾き始めた。低音から高音まで広い音域を楽々と歌いこなすクリシャールの歌唱には最後まで品の良さが漂っていた。その音域はモーツァルト「魔笛」の中の難曲「夜の女王」の最高音域をはるかに超えるという。ぜひ「夜の女王」も聴いてみたいものだ。

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