【開園から1年半、26日に手づくり市など多彩なイベント】
昨年4月に開園した「奈良カエデの郷・ひらら」(宇陀市菟田野古市場)のカエデが赤や黄に染まり始めた。園内には内外のカエデ約1200種・3000本が植樹されており、廃校になった小学校の木造校舎を背景に色とりどりのカエデを楽しむことができる。紅葉の見頃は今月下旬~来月下旬。1週間後の26日(日)には手づくり市や野外コンサート、地元野菜や果実の直売などが予定されている。
カエデの郷の開設は旧菟田野町が2005年、カエデ研究家・写真家の矢野正善氏からカエデの木々を蔵書約1万冊とともに寄贈を受けたのがきっかけ。それを町村合併で誕生した宇陀市が引き継ぎ旧宇太小学校跡を活用して開園した。同小学校は130年を超える歴史を刻んできたが、少子化に伴って2006年廃校に追い込まれた。
運営母体はNPO法人の「宇陀カエデの郷づくり」。園内には様々なカエデが植えられた広大なガーデンのほか、栽培施設のハウス、苗木販売所、カフェ、お土産販売コーナー、ギャラリーなどがある。カエデの中には「菟田野ノ里」「室生大紅」など地元の地名にちなむ名が付いた品種も。カエデは元禄時代に園芸として流行し、明治時代の頃から海外にも輸出されたという。カエデの種類の豊富さに改めて驚かされた。
ガーデンの前面に立つ2階建て校舎は昭和初期の建設。ノスタルジックな雰囲気に包まれており、かつてNHK朝の連続小説『あすか』のロケ地になったこともあるという。職員室や教室は廃校になった当時の姿を留める。壁面には表彰状や地図が貼られたまま。音楽室には主が居ないピアノや鍵盤ハーモニカが寂しげに置かれ、黒板にはハクボクで音符が書かれていた。校庭には立派な「創立百周年記念之碑」も。今にも子どもたちの元気な声が教室や運動場から聞こえてきそうな気がした。カエデとともにこの校舎も一見の価値がありそうだ。