【国指定の天然記念物、神武天皇お手植えの伝承も】
杉といえば天に向かって直立するものとばかり思っていた。だが、この異様な樹形の杉によって、そんなイメージが打ち砕かれた。奈良県宇陀市菟田野佐倉の桜実(さくらみ)神社境内にある「八ツ房杉」。1カ所から何本もの太い幹が斜めに伸びて絡まりあう。中にはまるで大蛇のように地を這う幹もあった。
八ツ房杉は国の天然記念物に指定されている。伝承によると、神武天皇が大和平定のため近くの「菟田の高城(うだのたかぎ)」に陣を張った際に植えたという。日本最初の城として古事記などにも登場する高城は桜実神社に向かう途中の丘陵にある。伝承を信じるとしたら、この杉の樹齢は一体どのくらいになるのだろうか。1800年? 2600年?
案内板によると、大きさは「樹高14m、樹幹周囲9m」。八ツ房杉の由来は「八つの幹が巨大な株状を成す」ことからという。下から見上げた後、石垣の横から上って裏手に回った。四方に伸びる太い根元を目の前にして、その巨大さを改めて実感。木肌は赤く、コケむしていた。太い幹には倒れないようにワイヤーが張られ、はしご状の支柱も。八ツ房杉とその周囲には力強い生命力が漲っていた。