【4年目の「ムジークフェストなら」開幕、28日まで、】
奈良の梅雨シーズンを彩る音楽の祭典「ムジークフェストなら2015」(13~28日)が開幕した。今年で4回目。14日には奈良県文化会館で「珠玉のフランス・オペラ」と題してサン=サーンスの『サムソンとデリラ』とビゼーの『カルメン』の演奏会が開かれた。管弦楽は大阪交響楽団、指揮・中田昌樹。声楽はメゾソプラノのマリアンヌ・デラカサグランド、テノールの後田翔平、バリトンの駒田敏章に、特別編成の合唱団(14人)が加わった。
いずれのオペラも抜粋版の演奏会形式で原語上演・字幕付き。前半の『サムソンとデリラ』は通常約1時間50分の演奏時間が半分の55分だった。このオペラは旧約聖書に基づく物語。マリアンヌはよく通る深みのある響きで、怪力の英雄サムソンに敵対する異教の美女デリラ役をこなした。とりわけ「彼は私の奴隷」と歌うアリアや、「ああ、私の愛に応えて、私を酔わせて」とサムソンを誘う歌声は聴き応え十分だった。
マリアンヌはフランスのパリ音楽院やCNIPAL(国立オペラ研修所)で学んだ後、国内外のオペラ公演などで活躍中。3年前には大阪いずみホールで同じデリラ役として出演したことも。後半の『カルメン』には真っ赤なロングドレスにショール姿で登場し、自由奔放に生きる妖艶な女性カルメンとしてアリアの「ハバネラ(恋は野の鳥)」などを披露した。
テノール、バリトンの若手2人の豊かな声量や伸びやかな響きにも会場から温かい拍手と「ブラボー」の掛け声が送られた。テノールの後田は昨年1月の第44回イタリア声楽コンコルソ(日本イタリア協会主催)でミラノ大賞を受賞し、現在イタリアのパルマ国立音楽院に留学中。バリトン駒田は東京芸術大学大学院を修了し、昨年の第83回日本音楽コンクール声楽部門の第1位。2人ともその実力を遺憾なく発揮してくれた。今後の一層の活躍に期待したい。