く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「比較ミツバチ学 ニホンミツバチとセイヨウミツバチ」

2015年06月17日 | BOOK

【菅原道夫著、東海大学出版部発行】

 著者菅原氏は1968年、岡山大学理学部生物学科卒業。大阪府立高校で教諭を務めた後、サントリー研究センター、京都学園大学の研究員などを経て現在、神戸大学大学院理学研究科生物学専攻生体分子機構講座研究員。2013年に「捕食者スズメバチに対する日本ミツバチの防衛行動」などの論文で神戸大学から博士号を授与した。専門は動物生理・行動学。

     

 在来種ニホンミツバチはトウヨウミツバチの1亜種とされ、北は下北半島から南は奄美大島まで広く分布する。大昔から日本列島に生息していたのだろう。そう考えたいところだが、どうもそうではないらしい。それは①日本書紀の皇極天皇2年(643年)の「百済太子余豊がミツバチを奈良の三輪山に放して飼育した」という記事②ニホンミツバチは遺伝子的に韓国のトウヨウミツバチに極めて近い③アジア~ヨーロッパのミツバチ分布域に広く生息し、ミツバチを専門に捕食する「Bee wolf」と呼ばれるハチが日本列島には存在しない――などの〝証拠〟による。

 セイヨウミツバチの3亜種のうち世界で広く養蜂に使われているのがイタリアン種。蜜を集める能力に優れ、日本国内で見られるのもほとんどがイタリアン種という。これに比べるとニホンミツバチはやや小さく体色が黒いのが特徴。営巣の場所や形態も両者で異なるが、ニホンミツバチにとって特に大切なのが巣の入り口の大きさ。それは天敵のオオスズメバチが生息することによる。著者が市街地で見つかった巣249カ所を調べたところ、その多くが入り口の幅が5cm以内と小さかった。

 ミツバチは気温が高くなると、巣の入り口で翅を震わせて巣を冷やす。この扇風行動はニホン、セイヨウの両ミツバチに共通するが、その方法は対照的。ニホンミツバチは入り口で頭を外側み向けて翅を震わせるが、セイヨウミツバチは反対に頭を入り口に向ける。さらにニホンミツバチは巣の中に風が通りやすいように、ハチたちが巣の外に出る。この行動を〝ハチの夕涼み〟と呼ぶそうだ。ただ、ハチが水を飲み巣内に打ち水をして温度を下げる行動は両者に共通するという。

 ニホンミツバチの巣の中から驚くほど多くのオオスズメバチの死体が見つかることがあるそうだ。1匹のミツバチがスズメバチに挑みかかるのを合図に一斉に飛びかかって取り囲み蜂球を作る。蜂球は30分以上持続するが、著者の調査ではスズメバチは10分以内に死んでいたという。蜂球内の最高温度はほぼ46度、炭酸ガスの濃度は4%に達した。「ニホンミツバチはエネルギーを大量に使い、発熱し、高体温の体内から相対湿度90%以上、4%の炭酸ガスを含む呼気を排出しスズメバチを殺しているのです」。ミツバチには熱耐性があり、致死温度は50度超という。

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