く~にゃん雑記帳

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<奈良市杉岡華邨書道美術館> 「謙慎の書② 梅原清山と寄鶴文社選抜展」

2015年06月20日 | 美術

【隷書、篆書、楷書、仮名交じり…書家22人の作品一堂に】

 奈良市杉岡華邨書道美術館で「謙慎の書② 青山杉雨の門流―梅原清山と寄鶴文社選抜展」が開催中。同美術館は2008年から国内を代表する書壇の会派・門流に焦点を当てて現代の書を多角的に取り上げてきた。今展もその一環で、関東を中心に活動する読売系最大派閥の1つ「謙慎書道会」について紹介するシリーズの2回目。書家22人が24点の作品を出展している。7月12日まで。

 青山杉雨(さんう、1912~1993)は昭和から平成の初めにかけ書壇に一時代を築いたわが国を代表する書家。「一作一面貌」と評される多様な表情を持つ作品で知られ、謙慎書道会の初代理事長を務めた。92年に文化勲章受章。梅原清山はその青山を師とし、日展特選、日本芸術院賞などを受賞。現在、謙慎書道会顧問で寄鶴文社の顧問も務める。

 

 展示会場を入ると、正面に梅原の作品が3点並ぶ。その中央に大きな作品『天馬』(写真㊧、96.5×170cm)。昨年1月の書展のため午年(うまどし)に因んで中国の「史記」から選文した。天馬は上帝が乗って天を駆ける名馬。篆書金文の太字で、力強く勢いのある馬を表現している。井上清雅の『奮鱗翼』(宋書)は「鱗翼を奮う=存分に活躍すること」を意味し、今年正月の書き初めとした作品。

 岩井韻亭の『崑崙山南月欲斜 胡人向月吹胡笳』(岑参詩)は流れるような筆致が印象的な作品。末尾の「胡笳(こか)」は古代中国の北方民族胡人が吹いた葦の葉の笛。岩井はこの書作について「最近、身近に旅立っていく友人が多いが、送る自分も90歳を越えると、もの悲しいはずの胡笳も、どこか清々とした響きに感じられる。送る者と送られる者に悲しみを超えた絆があるような……」と記す。

 謙慎書道会の基本理念は「古典を尊重し、古典に学び、古典に立脚した学書の姿勢」。そのこともあって、今展の出品作品も「詩経」「史記」「北史」など中国の古典からの選文が多くを占める。その中で清水研石の作品『正法眼蔵随聞記より』は唯一つ漢字仮名交じりの書。「學道の人衣食を貪ることなかれ……」。その長文の流麗な作品に、改めて柔らかい仮名文字の魅力も味わわせてもらった。

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