【「ネバツツジ」の異名も 萼や葉、茎の腺毛からネバネバした液を分泌】
半落葉低木の野生ツツジ。日本固有種で、主な分布域は本州の静岡・山梨~岡山と四国の東部に限られる。低山や丘陵地の日当たりのいい林縁に自生し、4~6月頃、若葉の展開とともに枝先に2~5個の淡い紅紫色の花を付ける。花弁上部には濃い紅色の斑点。長い雄しべが5本。春葉と夏葉の別があり、春葉は大きく、秋になると紅葉して落ちるが、夏葉は小さく、落葉せずに冬を越す。
花の萼や柄、葉、茎などに長い腺毛が密に生え、触ると鳥黐(とりもち)のように粘つく。「モチツツジ」の名前もそこから来ており、ずばり「ネバツツジ」という異名を持つ。「ひっつきつつじ」「むしとりつつじ」「ひげつつじ」などと呼ぶ地域もあるそうだ。モチツツジはその粘着力のため萼などの周りにごみや枯れ葉、小さな虫などがくっ付いていることが多い。
腺毛は毛虫などから花や葉の食害を防ぐ役割があるとみられる。ただモチツツジをすみかとする昆虫も。カメムシの一種「モチツツジカスミカメ」だ。このカメムシは腺毛の上を自由に動き回るだけでなく、粘毛によって捕らえられた小さな昆虫を餌とし口吻を差し込んで体液を吸う。モチツツジは小さなガの仲間「モチツツジメムシガ」の幼虫の食餌植物にもなっているそうだ。
モチツツジの変種や園芸品種には白花や斑入りのほか、雄しべが倍の10本ある「アワ(阿波)ノモチツツジ」、花弁と葉の幅が狭い「セイカイハ(青海波)」、花冠が淡い黄緑色の「コチョウゾロイ(胡蝶揃)」などがある。「ミヤコ(都)ツツジ」はモチツツジとヤマツツジの自然交配種。2つのツツジが混生する場所で見られ、関西では六甲山、比叡山、葛城山などで目にすることができる。