【秋には真っ赤な実に、名前は誤認から?「白山には生えていない」】
レンブクソウ科(旧スイカズラ科)ガマズミ属の半常緑低木。本州の中部以西、九州、沖縄の暖地の海岸沿いや山野に自生する。樹高2~6m。4~5月頃、枝先の集散花序に白い小花をたくさん付ける。小花の花冠は径6~8mmほどで、先が5つに裂ける。花序の直径は10~15cmにもなり、少し離れて見ると、まるで無数の白い星をちりばめたよう。
秋になると小さな楕円形の実が真っ赤に熟す。白い花と赤い実を年に2度楽しめることから、庭木のほか生け花の花材としてもなかなか人気。葉は光沢のある緑色で、一部の葉は秋から冬にかけて紅葉する。硬い幹や枝は木釘や道具の柄などに用いられたという。伊豆半島や伊豆諸島には高さが2mに満たない「コハクサンボク」がある。
白山といえば石川県にある名峰。その白山地域で見つかって名前の頭に「ハクサン」と付く植物は実に多い。ハクサンイチゲ、ハクサンフウロ、ハクサンシャクナゲ、ハクサンコザクラ……。ただ、このハクサンボクの名前に関しては「白山にはえていると誤認したもの」(改訂版原色牧野植物大圖鑑)といわれる。それにしても、寒さにあまり強くなく暖かい地域にしか自生しないのになぜ誤解したのか、という疑問が残る。真っ白な花の様子を雪の白山にたとえたのではないか。一部にそんな見方もあるそうだ。
ハクサンボクによく似た花木に同属のガマズミがあるが、ガマズミは落葉樹で葉には光沢がない。ハクサンボクは九州地方を中心に様々な名前で呼ばれている。「いせび」「やまてらし」「いぬでまり」「ひよどりじゅーご」……。「いぬでまり」と呼ばれるのは、同属で花が白いガクアジサイのようなヤブデマリやその園芸種オオデマリに比べると、やや地味に見えるということだろうか。愛知県は「レッドリストあいち2015」で、ハクサンボクを絶滅の危険が増大しているとして絶滅危惧Ⅱ類に指定している。