【土器、木製品、石器に続く唐古・鍵遺跡出土の分野別遺物紹介第4弾】
奈良県田原本町の唐古・鍵ミュージアムで春季企画展「弥生遺産Ⅳ~唐古・鍵遺跡の土製品・ガラスetc.」が開かれている。国内有数の弥生時代の大集落、唐古・鍵遺跡。同ミュージアムでは出土した膨大かつ多種多様な遺物の中から、これまで3回にわたって土器、木製品、石器に焦点を当てた分野別企画展を開いてきた。最終回に当たる今回は、出土量は少ないものの弥生人にとって貴重な材質や役目を担っていたとみられる土やガラス、金属でできた製品、玉類、骨角器などを取り上げた。5月22日まで。
同遺跡からはシカの角や脚を中心に、道具を作る段階の加工痕とみられる様々な骨角が出土している。シカの角は矢の先に付ける鏃(やじり)や弓の両端の弦をかける道具・弭(ゆはず)、糸つむぎに使う紡錘車などに、脚の骨は縫い針や狩猟用の刺突具などに加工された。またシカやイノシシの肩甲骨は焦げ具合などから吉凶を占う卜骨(ぼくとつ、写真㊧の手前)に利用された。イノシシの下顎骨(写真㊧の奥)には関節に近い箇所の両側に孔が開けられているものも。岡山県の南方遺跡では孔に棒を通し12個の下顎骨を連ねた状態のものが出土しており、弥生時代には捕獲したイノシシの下顎骨を棒に架ける習慣があったと考えられるという。
土製品では炉に風を送るための円筒状の送風管、銅鐸や銅戈(どうか)、銅鏃(どうぞく)などの武器を作るための鋳型、狩猟に使われたとみられる土製投弾など、軟らかい粘土の特性を生かしたものが出土している。人や動物を模した人形(ひとがた)や鶏頭形など、祭祀に使われたとみられる土製品もある。金属では鉄製品の出土はわずかだが、青銅製は祭祀や装飾に使われた銅鐸や鏡、巴形銅器、釧(くしろ)などが出土。玉類ではヒスイやガラス、水晶の玉、碧玉管玉が見つかっている。このうちヒスイは蛍光X線分析の結果から新潟県の姫川流域産とみられ、また碧玉の産出地は丹後半島や石川県小松市菩提・那谷地域と推定され、当時の広範囲にわたる交流を物語る。
企画展に合わせ、今年2月に県指定文化財となった笹鉾山2号墳(田原本町八尾)からの出土品も併せて公開中。2号墳は約3mの周濠に囲まれた直径24mの円墳で、周濠南東側から古墳時代後期の埴輪、須恵器、土師器、木製品が出土した。人物埴輪の髪型や入れ墨、馬形埴輪の馬具などは当時の習俗が忠実に表現されていることから資料価値が高いという。土製の埴輪のほか〝木の埴輪〟といわれる笠形木製品(写真㊨)や石見(いわみ)型木製品も出土している。笠形は直径35cmほどで、いずれも中央に孔が開いており、この孔に柱を通して墳丘の周囲に並べられていたとみられる。これらの木製品はいずれも古墳の木棺にも多く使われているコウヤマキ製だった。