【琳派の流れを辿る作品群、国宝「婦女遊楽図屏風」などの風俗画も】
昨今の〝琳派ブーム〟の中で、大和文華館(奈良市学園南)で開かれている「琳派と風俗画―宗達・光琳・乾山・抱一」展が熱心な来場者で連日にぎわっている。尾形光琳と弟の尾形乾山を中心とする琳派の作品に加え、国宝『婦女遊楽図屏風』(松浦屏風)など琳派が活躍した桃山~江戸時代の風俗画も併せて展示中。5月22日まで。
琳派の展示作品には4点の重要美術品が含まれる。伝本阿弥光悦作の『沃懸地青貝金貝蒔絵群鹿文笛筒』、尾形光琳筆の『扇面貼交手筥(せんめんはりまぜてばこ)』(上の写真㊧)と『中村内蔵助像』、尾形乾山作の『武蔵野隅田川図乱箱』(同㊨)。光悦は『風神雷神図屏風』で有名な俵屋宗達とともに琳派の創始者といわれる。〝寛永の三筆〟ともいわれ書や絵、工芸などに多才ぶりを発揮した。同展では笛筒のほか『新古今集和歌色紙』や光悦筆と伝わる『刀匠名書』も展示中。本阿弥家は刀剣の鑑定や研磨を家業としていた。
宗達の展示作品は『寒山図』『桜図』や伝宗達筆の『伊勢物語図色絵』(六段「芥川」と八十段「衰えたる家」の2枚)。墨の濃淡を駆使して描いた『桜図』は深い味わいで、宗達水墨画の極致ともいえる。光琳の『扇面貼交手筥』は金箔貼りの桐箱に扇面画8面と団扇画4面を貼り合わせたもの。全12面のうち富嶽図、雲龍図など扇面画3面に光琳の落款と印章がある。ほかも光琳と関わりの深い絵師によるものだろう。光琳筆の展示作にはほかに『流水図広蓋』『雪舟写山水図』などがある。
尾形乾山は光琳の5歳下の弟で、野々村仁清に作陶を学んだ。京都に乾山焼の窯を開いていたが、70歳を前に江戸に下る。『武蔵野隅田川図乱箱』は裏面に「八十一歳画」とあり没年の作品。見込みに太い墨線で蛇籠(竹や木を編んだ護岸用の籠)と波と水鳥、側面にススキが描かれている。ほかに源氏物語の「夕顔」をテーマとした『色絵夕顔文茶碗』(写真㊧)や『色絵竜田川文向付』、光琳と乾山のコラボ作品『銹絵(さびえ)山水文四方火入』(同㊨)や『銹絵菊図角皿』なども。江戸後期に光琳・乾山の顕彰活動に力を注ぎ、〝江戸琳派〟の祖といわれた酒井抱一に関わるものでは『瓶花図』や『光琳百図・光琳百図後編』などが展示されている。