く~にゃん雑記帳

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<奈良県立万葉文化館> 特別展「古代への憧憬―近代に花開いた古典の美」

2016年11月24日 | 美術

【「記紀」や「万葉集」などに題材を求めた作品70点余り】

 奈良県立万葉文化館(明日香村飛鳥)で開館15周年を記念した特別展「古代への憧憬―近代に花開いた古典の美」が開かれている。明治時代は西洋の制度や文物を積極的に導入する一方で、美術界では古事記や日本書紀の神話などを題材とした作品が多く発表され、万葉集が広く読まれるようになる大正時代以降は「素朴な古代生活」への憧れを滲ませた作品も多く描かれた。これらの作品70点余を江戸時代から近年の平成まで時代を追って展示中。11月27日まで。

 会場を入ると2体の江戸時代の『柿本人麻呂像』。1体は「伝安井門跡賛、法眼泰晋画」、もう1体は「伝賀茂真淵賛」と伝わる。菊池容斎の『前賢故実』(全10巻、各上下冊)は上古から南北朝時代の皇族や忠臣の姿を描いたもので、漢文による解説付き。冨田渓仙の『万葉春秋』(上の作品)は万葉集に詠まれた椿や山吹などの草花が描かれた屏風絵。神宮徴古館(三重県伊勢市)から『仁徳天皇』『舎人親王』『和気清麻呂』など〝国史絵画〟5点も出展されている。国史絵画は昭和の初め、皇太子(今上天皇)誕生の記念行事として東京府が「養生館」の建設を計画し、そこに展示する歴史画として制作された。全部で78点あり、約60年前に東京都から伊勢神宮に譲渡された。

 

 展示中の国史絵画には『聖徳太子』も含まれるが、他にも聖徳太子に因む作品は多い。堂本印象の『太子降誕』(上の作品㊧=部分)は厩戸皇子誕生の場面を描いた作品。聖徳太子は厩(馬屋)で生まれたという逸話も伝わるが、ここでは穏やかな誕生まもない瞬間が明るく描かれている。吉村忠夫の『多至波奈大郎女』(作品㊨=部分)は聖徳太子妃で太子没後「天寿国曼荼羅繍帳」を作ったという橘大郎女を描いた作品。「第1回聖徳太子奉賛美術展覧会」(大正15年=1926年)に出品する予定だったが、時代考証などに時間がかかったため出品を諦め、後に帝展に応募し特選に輝いた。

 他に吉田白嶺の『土人形 武装した人』2体、大亦観風の『萬葉集畫撰』20点、菊池契月の『光明皇后』、上村松篁が井上靖の歴史小説『額田女王』のために描いた挿絵原画6点、小倉遊亀の『大津皇子』や『天武天皇』、大森運夫の『貧窮問答歌』なども並ぶ。

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