【特別展示「豊田家・飯田家寄贈品展」も同時開催中】
京都高島屋の7階グランドホールで、高島屋史料館が所蔵する日本画を中心に60点を展示する「日本美術と高島屋~交流が育てた秘蔵コレクション」展が開かれている。竹内栖鳳や富岡鉄斎、横山大観、東山魁夷、川合玉堂、前田青邨、平山郁夫、小倉遊亀、片岡球子など日本画壇を代表する錚々たる画家の作品が一堂に並ぶ。同時に特別展示として「豊田家・飯田家寄贈品展」も開催中。4月10日まで(入場無料)。(写真は㊧竹内栖鳳の『アレ夕立に』=部分、㊨北野恒富の『婦人図』)
高島屋は江戸時代末期に呉服商として創業、明治維新後には多くの画家や友禅作家を擁して美術染織品を制作し、内外の博覧会に積極的に出展した。竹内栖鳳の大作『富士』も高島屋の注文でヨーロッパ向け刺繍壁掛けの下絵として制作された。栖鳳の作品は特別展示も含め8点を展示中。『アレ夕立に』は清元「山姥(やまうば)」の一節「あれ夕立に濡れしのぶ」に因む作品で、舞妓が舞う一瞬の美を捉えた。
山元春拳の『ロッキーの雪』、竹内栖鳳の『ベニスの月』、都路華香の『吉野の桜』はビロード友禅の壁掛け「世界三景 雪月花」の原画として描かれた作品で、巨大な壁掛けは1910年の日英博覧会で人気を集めた。うち2点は現在ロンドンの大英博物館が所蔵しているが、『吉野の桜』は行方が分からないという。前田青邨の『みやまの四季』は梅や桜、藤などの花々が大きな半円形に咲き誇る中に小鳥たちが集う構図。大阪・毎日ホールの緞帳の原画として制作された。
横山大観の作品は下村観山との共作も含め4点を展示中。共作の『竹の図』は大観が左隻、観山が右隻を分担した金地の屏風絵で、大観は直立する親竹と若竹、観山は途中で円を描いて上に伸びる竹を描いた。北野恒富の『婦人図』は1929年に大阪長堀店で開かれた「キモノの大阪春季大展覧会」の販促ポスターの原画として描かれた。左の肩から胸の白い肌を露出した大胆な構図が注目を集め、ポスターが駅に展示されるや多くが持ち去られたという。
特別展示「豊田家・飯田家寄贈品展」の豊田家はトヨタ自動車の創業家、飯田家は高島屋の創業家を指す。両家は高島屋の四代当主飯田新七の娘、二十子(はたこ)さんが1922年に、後にトヨタ自動車を創業する豊田喜一郎氏と結婚したことからご縁ができた。両家から史料館に寄贈された美術品約30点のほか、二十子さんが嫁ぐ際に着用した着物なども展示している。
竹内栖鳳の『小心胆大』(写真㊧=部分)は大きなヘチマに小さなアリが描かれた作品。高島屋が1909年に開いた初の美術展「現代名家百幅画会」に出品されたものの、その後長く所在不明とされていたが、このほど豊田家に伝わっていたことが分かったという。富岡鉄斎の『碧桃寿鳥図』(写真㊨=部分)は3000年に一度実をつけるという不老長寿の碧桃に、西王母の使いとされる青い鳥寿鳥が止まったおめでたい構図の作品。他に都路華香の『果物尽し』、泥谷文景の『白猿』、山口華楊の『春蘭』なども並ぶ。