【中国原産、万葉集にも「はねず」として登場!】
バラ科サクラ属(スモモ属)の落葉低木。樹高は1~2mほどで、よく分枝し葉に先立って4月頃、小枝の節々に淡紅色の一重咲きの小花を2~3輪ずつ付ける。庭梅の名は花が梅に似て庭木として植えられることから。7~8月頃、丸い果実が紫赤色に熟す。生食されるほか果実酒に漬けることも。種子は漢方で「郁李仁(いくりにん)」、根は「郁李根(いくりこん)」と呼ばれ利尿、便秘、歯痛などに用いられる。
原産地は中国。古い時代に日本に渡ってきたとみられ、万葉集に「はねず」として詠まれた植物がニワウメではないかといわれる。万葉表記は「唐棣」「朱華」「波禰受」などで4首ある。そのうちの1首に「思はじと言ひしてものをはねず色の移ろひやすき我が心かも」(大伴坂上郎女)。はねず色は梔子(クチナシ)と紅花で染めた黄色がかった薄い赤色。色が褪せやすいことから、心移りや移ろいやすい愛情を導く枕詞になったそうだ。
ニワウメの学名は「Prunus japonica(プルヌス・ヤポニカ)」。属名の語源はスモモを意味するラテン古名から。種小名は中国原産にもかかわらず「日本の」を表すヤポニカになっている。名付け親は江戸中期に長崎の出島商館付き医師として日本に滞在したスウェーデンの植物学者カール・ツンベルク(1743~1828)。彼はシーボルト、ケンペルとともに〝出島三学者〟の一人といわれた。ニワウメによく似た近縁種に八重咲きの「ニワザクラ(庭桜)」がある。「郁李に春光あはき蝶のかげ」(西島麦南)