【入江泰吉作品『春の平城宮跡』の桜と対面!】
桜の季節になるといつも浮かぶ歌がある。竹内まりあ作詞作曲の『人生の扉』の2番目。「♪満開の桜や色づく山の紅葉を この先いったい何度見ることになるだろう ひとつひとつ人生の扉を開けては感じるその重さ……」。奈良市内のソメイヨシノもちょうど満開、天気も幸い花見日和。そこで日曜日の7日、朝から近辺の桜見物に出掛けた。御嶽山大和本宮をスタートし、秋篠川源流の桜並木、次いで平城宮跡、そして市内屈指の桜の名所佐保川へ。4カ所を徒歩ではしごし春爛漫の気分を満喫させてもらった。(下の写真は樹齢170年といわれる〝川路桜〟などが咲き誇る佐保川の桜並木)
御嶽山大和本宮は奈良県立大渕池公園(西地区)に隣接する。山岳宗教「御嶽教」の里の本部で、大本庁(教団本部)もここに置く。毎春、境内では約300本のソメイヨシノが咲き誇る。恒例の「さくらまつり」は一足早く3月30~31日に開かれたが、1週間後のこの日ほぼ満開となって本格的な見頃を迎えていた。今年も本殿に通じる太鼓橋の朱色と桜の淡いピンク色、そしてバックの青空のコントラストが実に美しかった。(写真㊨は秋篠川源流の桜並木)
秋篠川源流に桜並木ができたのは約20年前、奈良市制100年記念事業に応募した「秋篠川に千本の桜を!」というアイデアが採用されたのがきっかけ。桜の木1本1本に面倒を見る〝里親〟の名前が記され、地元の小学生が川や桜への思いを綴った短冊も飾られている。この日7日は大正琴や和太鼓の演奏などがある「さくら祭り」の最終日。祭り会場を後に進むと、幹が切り落とされた木が数本目に付いた。そばに「桜幹損傷事件について」と題した説明文。それによると、昨年11月、この狭い並木道を宅配トラックが無理に通ろうとして傷つけたもので、業者側は「桜の枯れ死対策を含め対処することを約束した」という。
佐保川への途中、平城宮に寄ったのは対面したい桜の木があったから。それは今年1月奈良市写真美術館の「入江泰吉 古都奈良の文化財~総集編」に出ていた入江作品『春の平城宮跡』(写真㊨)の桜。撮影は1986年で既に30年以上たっており、現存するか少し不安だったが、大極殿の南東に位置する所にそっくりの木があった! 大きな幹の形だけでなく、背後の奈良時代の基壇跡、春日原始林の山並みなどもほぼ一致する。写真では幹の下部で枝が左右に張り出しているが、近づいて確認するとその部分は幹から切断されていた。根元では十数人の団体と年配の男女2人が花見中。その年配の方は40年ほど前、子どもと一緒にこの桜の下で花見をして以来、毎年やって来ているとのことだった。佐保川では江戸末期、奈良奉行だった川路聖謨(かわじとしあきら)が植樹したといわれる「川路桜」が今年も見事に咲き誇っていた。