させぼ moonlight serenade

自身の取扱説明書です
きっと

わたしがいちばんきれいだったとき

2012-11-18 08:39:09 | 日々のこと
素敵なヒトは

どんな素敵な

日常を

送ってらっしゃるの

そう思う瞬間が

あります


背景も含めた

その方の

人となりを

知りたいと

思う

魅力的な方々


詩人茨木のり子さんも

そんな方のヒトリ


茨木のり子の家


それを読んで

彼女の無造作な

脱け殻を

垣間見て

ますます

想いは募るのでした


彼女の詩には

己れを

諭す場面

どうにもならない

世相や他者との

波や歪みにも

染まらないという

太い芯があるのです


吹いても消えない

情炎を

ワタシも

点し続けていたいな



わたしが一番きれいだったとき 
               茨木 のり子


わたしが一番きれいだったとき

街々はがらがら崩れていって

とんでもないところから

青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき

まわりの人達がたくさん死んだ

工場で 海で 名もない島で

わたしはおしゃれの

きっかけを落としてしまった

わたしが一番きれいだったとき

だれもやさしい贈り物を

捧げてはくれなかった

男たちは挙手の礼しか

知らなくて

きれいな眼差しだけを

残し皆発っていった

わたしが一番きれいだったとき

わたしの頭はからっぽで

わたしの心はかたくなで

手足ばかりが栗色に光った

わたしが一番きれいだったとき

わたしの国は戦争で負けた

そんな馬鹿なことって

あるものか

ブラウスの腕をまくり

卑屈な町をのし歩いた

わたしが一番きれいだったとき

ラジオからはジャズが溢れた

禁煙を破ったときのように

くらくらしながら

わたしは異国の甘い音楽を

むさぼった

わたしが一番きれいだったとき

わたしはとてもふしあわせ

わたしはとてもとんちんかん

わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた 

できれば長生きすることに

年とってから

凄く美しい絵を描いた

フランスの

ルオー爺さんのように
              
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする