「幼児向き」
[ジェイとドゥのゆきあそび」 片平直樹作 高島純 絵
雪がうれしくてしかたのない様子のお父さんペンギンのジェイ。寒が りの息子ペンギンのドゥも、どんどん巻き込まれてゆきます。ジェイが どうしても、おおきなかまくらをつくると言いはり、ドゥと雪を集めてい るうちに、ご近所さんの雪かきもするハメに・・・。雪かきが終わるころ にはジェイとドゥの家の前は雪の山。とびっきりおおきなかまくらがで きたことは言うまでもありません。そしてドゥは、作りたかった「あるも の」もちゃんと作りましたよ。なんだと思いますか?高畠さんの絵は、 はりきっているお父さんの姿をいきいきと表現。はりきりすぎの一途 さもおかしくて温かです。
いもうとのなみが眠ってしまい、はるなはおかあさんとふたりきり、おか あさんは「はやくねなさい」というけれど、ねむくなんかありません。「お ねえちゃんがさわいでいたらおかしいでしょ」といわれ、「ちがうもん。お ねえちゃんじゃないもん。はるなははるなだもん」と反論。そしてなぞな ぞをだします。「ねるまえに はるなが いくのは どこでしょう!」いろい ろ言ってみたけれど、とうとう答えられなかったおかあさんの「ばつ」とし て、はるながしてもらったことは?絵ものんびりしてあたたかく、1日の 終わりに優しく満ちてゆく時間と表情を、細やかに描いています。
「低・中学年向き」
ペ-ジをめくるとそこに、常識をくつがえすような思わぬ展開(絵)が現 れ新鮮な驚きを体験することは、絵本の大きな魅力のひとつです。この 作品も、そんな絵本ならではの表現効果が生かされて、抜群におもしろ い! 私の所属する「おはなしネットぼんぼん」の例会の時、「おはなし 会でおすすめの絵本」として、メンバ-のひとりが読みきかせをしてくれ ました。「うえきばちがあったのでつちをいれて、○○○○○○をうえま した」。水をやり、めがでてはがでて、はながさきました。そして、さらに 成長?をつづけ・・・とうとう・・!?どうなったのか、どうぞ絵本をみて(読ん で)ください。発想の妙味と余韻を残す終わり方で、不思議な感覚が尾 をひきます。
也子(かのこ)は四年生。家では大人たちが、きつねに化かされた話 を折りに触れくりひろげています。ある日とうとう、也子も竹やぶで子ぎ つねに出会いましす。子ぎつねは、「あんた、わたしに化かされたい ?」とききました。也子はきっぱり断りますが、それからふたり(?)の 実にかわいくほほ笑ましい交流がはじまります。遊ぶ風景も心の動き も、とても素朴に繊細に丁寧に描かれています。大人たちの会話も味 わい深い広島弁でいきいきとして、引き込まれます。そんなかけがえ のない大切な日々を一瞬にして奪ったもの、それは・・・。作者は被爆 二世。詩情豊かに子どもを描き、真摯に平和を伝えます。
「高学年以上」
大切な人に贈りたい、メッセ-ジ絵本です。作者のアンドレ・ダ-ハンは、 1987年に初めて「ぼくのともだち、おつきさま」という絵だけの絵本を出 版しました。その後、「もうひとりのともだち」を出版し、その中で「おひさ ま」と「おほしさま」も仲間入りします。ダ-ハンの絵を通して伝わる「あた たかさ」と「よろこび」。認め合い、あるがままを受け入れている空気。きみ がすきというきらめき。この絵本には、きたやまようこさんが、「きみ」(お つきさま?)への親愛と感謝の言葉をシンプルに添えています。あなたに とっての「きみ」は誰(何?)ですか?
12歳の少年が銃を持ち、雇われて人を殺す・・・。とても衝撃的なの内容 です。この物語は、フィックションですが、コロンビアで実際に起ったできご とに基づいて書かれています。コロンビアは、コ-ヒ-やエメラルドなどの 産出国として知られていますが、一方では、貧富の差が激しく、麻薬やゲ リラ、テロ、汚職など多くの問題を抱えているといいます。貧しく教育も十 分に受けられず、虐待を受けるなど劣悪な環境に置かれる子どもたちが、 「生きるために」闇の仕事に手を染めてゆくのです。目の前に見えなくても、 現実に起きている世界の一部。子どもたちの慟哭と、大人の責任が胸に刻 まれました。