芽室町農協の挑戦 [サイズ]均一化で増収見込む
「種イモを日光にさらさないのは初めて。『教科書』に載ってないんだから」。十勝管内芽室町でジャガイモを栽培する永原克美さん(57)は5月上旬、種イモがずらりと並ぶ納屋でこう語った。
「日光浴」はせず
従来の「常識」では、植え付け前の日光浴が芽を丈夫にするとされてきた。だが、永原さんは風通しの良い納屋で種イモを約1ヵ月保管。暖房機も置き、冷え込む日も均一の温度で管理した。種イモは地下茎に実が付く。茎の本数が多いと実が密集して小さくなり、逆だと大きくなる。本数を左右するのは温度だ。それを一定に保って茎きの本数をそろえ、同じサイズを量産するのが目的だ。新技術を指導した芽室町農協の西谷洋人農業振興センタ-長は「コンテナに入れた種イモを日光浴させる方法だと、底と上部で温度差ができ、茎の本数がばらつく」と離す。芽室町では約500戸が男爵やメ-クインなど12品種を約3300㌶で栽培、年間14㌧を収穫する。作付け面積、生産量ともに、全国の市町村で帯広市に次ぐ第2位の「ジャガイモ王国」だ。今年、種イモに日光浴をさせずに栽培した町内の農家は約半数に上る。
背景にあるのは加工業者のニュ-スだ。粒が大きければ傷や病害の確率が高く、小さいと加工しづらい。中型の受け入れを増やせばロスが減り、作業工程も高率化できる。ポテトチップス最大手カルピ-(東京)の原料子会社「カルピ-ポテト」(帯広)は昨年度から、通常集荷する60~340㌘のイモのうち中型(90~190㌘)に1㌔当たり2円の報奨金を出している。5㌶を作付けする農家なら、最大約30万円の増収が見込゛める。流通業界も「品種やコストで有利になる可能性がある」(イオン北海道)と注目する。
英国の技術学ぶ
だが、サイズ均一化は当初、手探り状態だった。農協は主な技術などをチェックしたが、内容は20年以上変わっていなかった。このため農協は2001年、英国の技術を導入し、傷が少なく、同じサイズのイモを作る研究を独自に始めた。北海道農業研究センタ-バレイショ栽培研究チ-ム長は「ジャガイモ栽培技術者は日本にほとんどいない。芽室町は道内でも最先端だろう」と指摘する。ただ、西谷センタ-長は「種イモの大きさや植え付ける間隔など課題は多い。これからです」と話す。「大国」のプライドをかけた挑戦を追った。