はなし“抄”子供の頃から食べさせて
食生活の改善を訴える医師 昇 幹夫さん
「食べ物を変えると人生が変わる」という題でお話しょうと思います。食という字は「人」を「良」くすると書きます。食は体をつくる上で非常に大事だと、ずっと考えてきました。
1997年から13年間にわたって計300世帯の1週間の食卓を調査してきた専門家がいます。母親に朝昼夕の食事の写真を撮ってもらう簡単な調査です。しかし写真からは家庭の真実が、食卓によく出ているのが分かります。みんなで食卓を囲む1960年代は、心も豊かな「豊食」といわれました。その後、食べ物があふれて粗末にする「飽食」になり、今は食に関する知識が不足していて呆れた「呆食」だと言う人もいます。 最近では、朝食をスナック菓子で済ませたり、夕食はほぼ毎日外食で済ませたりする家もあるようです。これでは栄養が偏ってしまいます。現在、10代の糖尿病や高血圧は珍しくありません。最近では11歳で脳卒中になった子供がいました。6歳で総入れ歯という子供もいます。生活習慣病の低年齢化が進んでいるのです。 ついに今年は、子供用の便秘薬が売り出されたそうです。それだけ需要があるんですね。食生活を見直さず薬に頼ろうとする。そのうち薬を飲む回数が増えて、悪循環に陥るでしょう。昔はありませんでしたが、今の若い母親はよく子供に「〇〇ちゃん、今晩、何が食べたい?」と聞くそうです。子供に聞けば、ハンバ-ガ-のようなジャンクフ-ドやカレ-が挙がるのは当たり前です。子供に合わせる必要はないと思うのです。しつけは「おしつけ」なのですから。 というのも、味覚は10歳までに決まると言われているからです。子供の頃に何を食べるかは非常に大切です。10歳までに伝統的な日本食をたたき込もうと1980年代から、和食の給食を出している大阪府の保育園があります。子供たちは毎日、サバのみそ煮や切干し大根などを食べます。その結果、高校生になってもファストフ-ドに手を出さないそうです。日本人はもともと、何千年もの間、飢餓に耐えてきたことで、少ない栄養や脂肪で生きていける飢餓耐性遺伝子があります。その体に高カロリ-、高脂肪は良くない。やはりヘルシ-な和食が合っています。また、食べるなら生食が良いですね。火を使うと食べやすくなり、食べ過ぎて病気になることもある。生食が一番多いのは和食。だから和食は健康的と言われるのです。旬の物を食べることも大切です。春は芽、夏は葉物、秋は果実、冬は根菜と、四季を通して旬の食べ物は豊富にあります。フキノトウなどは少し苦味がありますが、昔の人はうまい調理法を生み出しています。別の側面からも食の話をしましょう。料理をする人はぼけにくいと言われます。夕食を作る時、まずは「昨日は何を食べたかな」「冷蔵庫に何があるかな」と考えて思い出そうとしますからね。男性も定年後、積極的に料理をするといいでしょう。そばやうどんを打つのは手先を使うので、ほけ防止になります。最近はス-パ-に買い物に行く男性が本当の「ス-パ-マン」かもしれませんね。今は、幼い時からフレンチやイタリアンなど世界の味に親しめる。でも私たちは日本人です。行き過ぎは良くない。国際人から少しだけ食い改めて、「穀采人」を心掛けてみてはいかがでしょう。
※のぼり・みきお 1947年、鹿児島県生まれ。82年より大阪で麻酔科、産婦人科の専門医として勤務。99年に病院を退職してからは、産婦人科診療をしながら「日本笑い学会」副会長などを務め、笑いの医学的効果を研究。大阪市在住。
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