マスコミ用語で生き残る
みなさん「カンフル注射」とか「カンフル剤」とかいう言葉を見聞きされ たことあるでしょうか?ちとえば、新聞紙上に「不況を打開するカンフ ル注射とは?」とか「今度の補助金がカンフル剤になった」とか、経 済や政治面などでよく見かける言葉です。さて、「カンフル」って何で しょう?試しに辞書で調べると、薬であるという説明と共に、「比喩的 に、普通の手段ではどうにもならなくなった物事を回復させる非常手 段」(広辞苑)され、という意味がありました。カンフルとは、楠からと られる樹脂である樟脳のことです。カンフルは、消毒剤や防虫剤とし てトイレやタンスに使われていましたが、心臓の力を強くする作用が あるとされ、心臓が弱った人に注射をする治療が、昔から広く行われ ていました。でも、私はカンフル注射をしたこともされたこともありませ ん。今から二十数年前に医学部で勉強していたときも、カンフル剤に ついての講義は一回もありませんでした。「おまえは抗議をサボった だろう」といわれると二言もありませんが、教科書にも書かれていま せんでした。実は、カンフル剤よりはるかに有効な薬がたくさん作ら れて、また、カンフル剤の効き目自体に疑問が出て、健在の医療で はカンフル剤は全く使われていないのです。でも、比喩的に使われる 「カンフル剤」は、ジャ-ナリズムの世界だけで生き残っているのです。 「カンフル剤」でビンとくる人の数は確実に減り続けています。新聞で の使用はそろそろ改めてもよいのではと考えています。 (とうに・のりつぐ=札医大医学部長)
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