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カンフル注射「當瀬規嗣解説」

2008-03-17 15:00:00 | 健康・病気

マスコミ用語で生き残る

みなさん「カンフル注射」とか「カンフル剤」とかいう言葉を見聞きされ                            たことあるでしょうか?ちとえば、新聞紙上に「不況を打開するカンフ                           ル注射とは?」とか「今度の補助金がカンフル剤になった」とか、経                            済や政治面などでよく見かける言葉です。さて、「カンフル」って何で                           しょう?試しに辞書で調べると、薬であるという説明と共に、「比喩的                          に、普通の手段ではどうにもならなくなった物事を回復させる非常手                          段」(広辞苑)され、という意味がありました。カンフルとは、楠からと                           られる樹脂である樟脳のことです。カンフルは、消毒剤や防虫剤とし                           てトイレやタンスに使われていましたが、心臓の力を強くする作用が                           あるとされ、心臓が弱った人に注射をする治療が、昔から広く行われ                           ていました。でも、私はカンフル注射をしたこともされたこともありませ                          ん。今から二十数年前に医学部で勉強していたときも、カンフル剤に                           ついての講義は一回もありませんでした。「おまえは抗議をサボった                           だろう」といわれると二言もありませんが、教科書にも書かれていま                           せんでした。実は、カンフル剤よりはるかに有効な薬がたくさん作ら                           れて、また、カンフル剤の効き目自体に疑問が出て、健在の医療で                            はカンフル剤は全く使われていないのです。でも、比喩的に使われる                          「カンフル剤」は、ジャ-ナリズムの世界だけで生き残っているのです。                         「カンフル剤」でビンとくる人の数は確実に減り続けています。新聞で                           の使用はそろそろ改めてもよいのではと考えています。                                  (とうに・のりつぐ=札医大医学部長)

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