小寒から31日間の天気を1年に見立て・・・ 先人の知恵VS札幌管区気象!?
あらゆる場面でコンピュ-タ-が幅をきかせる 時代。天気予報も例外ではないと思っていたら、 十勝管内芽室町の松浦元治さん(73)が毎年2 月に発表している「寒試し天気予想」が「よく当 たる」と、評判を呼んでいるという。寒試しは江戸 時代から農家などで行われていた予想法。札幌管区気象台は2月 下旬、ス-パ-コンピ-タ-を駆使した長期予報を発表した。先人 から伝わる知恵が勝つのか、コンピュ-タ-が当たるのか?
道内各地地で毎年発表「よく当たる」と農家に評判
「今年は要注意です」2月25日、松浦さんは米ど ころ、上川管内東川町のコミュニティ-センタ-で、 こう切り出した。毎年この時期、経営する肥料会社 の営業を兼ねて道内各地を回り、農家などに寒試 し予想を解説している。予想は数ヵ月先の日付を 挙げるなど、具体的だ。今年の上川地方は5月上 旬は気温が極めて低く、4、5日は霜に特に注意しなければならない。 7月3~13日と同15日~23日も低温で、水稲の不稔や病水害に注 意する必要がある。8月15日からは高温が続き、大霜は10月16日以 降になる-。「もし5月6、7日ごろ、道内のどこかで雪が降ったら、最悪、 平成5年(1993年)と思ってください」。93年は全国的な大冷害でタイ 米を緊急輸入するなど、戦後最悪の大凶作だった年だ。会場がざわつ いた。 寒試しは、「寒の内」(寒中。1月の小寒から2月の節分まで)の天気を 一年間に見立てる天気予想だ。松浦さんは72年から始め、試行錯誤 の末、小寒(今年は1月8日)から31日間の天気を基にしている。まず、 その間の温度と湿度の変化を連続して記録し、約2時間分の記録を1日 分として考える。次に、31日間の平均気温を計算し、①その2時間の気 温が平均より高ければ、その日の気温も平年より高く、平均より低けれ ば平年より低くなる②湿度が高ければ雨や雪、低ければ晴-を基本に、 過去の傾向や独自の解釈などを加味しながら、1年分を予想する。
湿度高ければ雨・雪/数ヵ月先の日付も対象 「スコアは無理」
くしくも、松浦さんが冷害への備えを説いた同じ 日、札幌管区気象台は8月までの道内の長期 予報を発表した。気温については「平年並み」 「高め」の言葉が並ぶ。3ヵ月予報の主な根拠は、異常気象の原因とな る「ラニ-ニャ現象」(ペル-沖の海面水温が低下する現象)が夏に 向けて次第に弱まっていく見込みであること、北海道の北側で高気 圧の勢力が強いこと、などだ。松浦さんの予想と随分違う。気象台は どのように予報しているのか。「ス-パ-コンピュ-タ-が計算した 予報を、各地の予報官が評価した上で、完成品として発表します」。 札幌管区気象台気候・調査課の長谷川昌樹予報官は、こう解説する。 予報の基になる気温や大気の状態に関するデ-タ-は、地上での観 測、衛星やレ-ダ-、気球で飛ばした機器や計る高層気象、航空機 や海上での観測など、多岐にわたる。日本各地はもちろん、世界各 地のあらゆるデ-タ-が、東京都清瀬市のス-パ-コンピュ-タ-に 送られる。ス-パ-コンピュ-タ-がデ-タを解析・計算して予報をは じき出し、各地の気象台へ。気象台の予報官は個別のデ-タを読み 解いたり、過去の気象傾向を踏まえて微調整したりして、最終的な予 報として発表する。長期予報は1週間、1ヵ月、3ヵ月、暖候期(6-8 月)などの平均的な天候を確率で予報する。慎重に、かつ、できるだけ 踏み込んで予報しているが、長谷川予報官はプロ野球の順位予想に たとえて言った。「どのチ-ムが優勝するかは予想できても、1ヵ月先 の試合のスコアまでは予想できません。予報も同じです」
百貨店も関心
ところが、松浦さんの寒試しはそのスコアまで予想する。昨年、1、2月 が暖冬、3-6月が低温、7-9月は高温・干ばつと予想したところ、 「75%くらい当たった」という。寒試しの根拠は「先人の知恵」としか言 いようがない。かつて松浦さんは、低温やひょうの被害にしばしば遭っ た。「天気を前もって予知できたら」と思い、寒試しに注目。長年取り組 んでいた空知管内北竜町の農家に習った。なぜ当たるのか、なぜ寒の 内なのか、松浦さんにも分からない。ただ、道内の農家の言い伝えには、 寒の内の気候に関するものが多い。「雨があれば豊作」「粉雪があれば 凶作」北風と東風は貧乏」また、「正月の鏡餅にカビが多く生えた年は豊 作」というのもある。カビは湿度の高さを意味している。松浦さんは「昔の 人が培った知恵をデ-タで実証し、後世に伝えたい」と思いを語る。現在、 寒試しをしているのは、渡島・檜山、空知、上川、北見、十勝の5地方。 一つにまとめた天気予想を三千部作り、無料で配っている。営農の参考 のつもりだったが、最近は各地の除雪業者や百貨店、電気店などから問 い合わせが相次ぐ。除雪の仕事の受注量を予測したり、扇風機や冬物衣 類など季節商品の発注の参考にしたりするためだ。プレッシャ-はない のか?松浦さんは笑って、首を横に振った。「当たるもはっけ、当たらぬ もはっけ。気象庁が大金をつぎ込んでも、なかなか当たらないのが天気 予報ですから」
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