動物で発見 生殖腺発達促す
春に繁殖活動をする脊椎動物では、甲状腺刺激ホルモンが脳に春 の日の長さを伝え、精巣などの生殖腺の発達を促していることを、 名古屋大大学院生命農学研究科の吉村崇准教授らのグル-プが 鳥のウズラで解明した。このホルモンの放出を制御できれば、家畜 や魚介類などの生産性向上を高め、食料増産にも応用できそうだ。 多くの脊椎動物は、脳内で1日の日の長さを感じ取り、繁殖活動や 冬眠などの行動を取る。これまでの研究で、日が長くなると、自律 神経や闘争本能などをつかさどる脳の視床下部で「DIO2」と呼ば れる酵素が盛んにつくられ、生殖腺の発達を促す遺伝子を活性化 させることが分かっていた。だが、日が長くなるとなぜDIO2がつく られるかは謎だった。吉村准教授らは、1日の日照時間を冬の条件 で飼育していたウズラを、春の日照時間に変えた際、視床下部で働 く遺伝子を調べたところ、視床下部に接する下垂体の一部(下垂体 隆起葉)で甲状腺刺激ホルモンがつくられ、視床下部に伝わり、DI O2がつくられる現象を突き止めた。甲状腺刺激ホルモンは甲状腺 に働き、体温調節などの機能を持つことで知られていたが、今回こ のホルモンが直接脳に働くことも初めて分かった。吉村准教授は「人 間でも季節によつて自殺が増えたり、うつ状態になつたりする現象が ある。今回の成果は、人間の季節的な行動の研究にも応用できる可 能性がある」と話している。
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