道立道南農業試験場研究部長 赤司 和隆
作物が生育する土壌には水。養分のほかに重 要な物質が含まれています。その一つが腐植で す。耳慣れない用語ですが、土壌を黒くしている 物質というとわかりやすいかもしれません。腐植 の原料は植物や動物の死骸、堆肥などの有機 物です。これらはミミズなどの小動物により破壊さ れ、次いで土壌中の微生物により分解されます。その過程で有機物の 一部から分解し難い、暗色無定形の物質である腐植が合成されま す。そのため腐植の蓄積に伴い土壌の色は黒くなります。なかでも 火山灰土壌は、腐植が蓄積しやすいことから、黒い色調のものが多 く、黒ぼく土と呼ばれ、国際的にはアンドソル(アンド=暗土)といいま す。写真左の土壌は腐植に富む火山灰土壌ですが、腐植を除くと元 の白い火山灰に戻ります。腐食があると作物の生育に適した肥よく な土壌になります。腐植は徐々に分解され、窒素をはじめ作物に必 要な養分を放出します。また、カルシウム、マグネシウム、カリウム などの養分を保持し、流れ去るのを防ぎます。さらに、土壌粒子を結 合させ、粒子の集合体である「団粒」の生成を促します。その結果、 団粒内、団粒間にすき間ができ、保水性、通気性が高まります。なお、 土壌中の有機物や腐植は減耗するので、堆肥や緑肥などの有機物 の補給が必要です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます