薬や治療で別の病気に■予防中心の制度が必要
30年ほど前から世界各国で数千人単位で10年以上の大規模・長期にわたる臨床試験(調査研究)が始まった。90年代に論文が出始めた。それまでの常識と違う結果が出てきた。例えば高血圧の薬の効果を検証する研究では、一つのグル-プに実薬。もう一方に何の効果もない偽薬を投与し、5~10年後調べた。実薬を飲んだ方は血圧が低下、高血圧の人に多い脳卒中の発症も減少した。ところが、総死亡(あらゆる原因の死亡)は実薬も偽薬もほぼ一緒だつた。
具体例を挙げる。英仏日など国際合同チ-ムが2001年に発表した調査は、6105人を実薬群と偽薬群に分け、4年間の死者数を追跡。脳卒中死亡は実薬群が42人、偽薬群が50人だったが総死亡実薬群が306人、偽薬群が319人で統計的には誤差の範囲。服薬で長生きするとは言えなかった。
-どうしてそんな結果になったのか。
薬の服用で血圧が下がりすぎて倒れ、転落・交通事故に遭うこと。降圧剤は血管が破れる脳出血は防ぐが、逆に血液の流れを悪くし、脳梗塞などを起こすこともある。さらに薬の服用でうつ状態となって自殺する人もいて、総死亡は変わらなかった。これは糖尿病など他の病気でも同じだ。
-薬は効果があるという確かなデ-タを基に国に認可され、投与されているのでは。
医療は専門化し、次々に最先端の治療が登場、現場の医師は深い知識を持っている。しかし、自分の分野のことは知っていても他の分野は知らない。薬を飲めば血圧は下がるし、血糖値も下がる。だが、その薬を10年、20年飲んでどうなるかはだれも検証していなかった。これは薬以外の治療も同じで、医療のマイナス面は意外に大きい。
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