挑戦 増産、通年化へ若手も奮起
「トヨタの『カンバン』方式も役立っている」。渡 島管内知内町の野口健一さん(52)はそう言い ながら、ニラの刈り取りに汗を流す。72棟のハ ウスに、雇用するパ-ト労働者は常時7人。町 内最大のニラ農家だ。昨年の販売額は4千万円を超えた。高校卒 業後、愛知県のトヨタ自動車の工場で働いた。在庫を切りつめ無駄 を省く「カンバン方式」に触れ、その経験が今生きている。農薬、肥 料の在庫は最小限にする。効率を上げるため、機械や作業過程の 改良を続ける。「工夫を重ねれば、知内ニラはさらに伸びる」。野口 さんの目が輝いた。知内町ニラ生産組合(石本顕生組合長、73戸) の2007年の販売額は8億2400万円に上がり、組合員平均で1千 万円を超えた。知内ニラの快走ぶりを反映し、06年度の新規就農 者は12人と渡島管内で最多。若者たちが続々と故郷に戻り、実家 の農家を継いでいる。石本貴広さん(28)は4年前、神奈川県の自 動車メ-カ-辞め、知内に戻った。「ニラの収入が安定しているから 帰ってこられた」。実家では、石本さんの就農を機にハウスを3棟増 やした。一方、町内で建設業に従事していた佐藤信也さん(46)は、 先行きが不透明な業界に見切りをつけ、5年前にニラ栽培を始めた。 「冬場に収入があることが大きい」と笑顔で話す。こうした農業後継 者の存在が産地を活気づけている。そんな仲、同生産組合は今年、 新たな「ハ-ドル」を掲げた。12年までに年間販売額を12億円まで 増やす計画だ。通年出荷の実現が達成への鍵を握る。「今度はおれ たちが頑張る番だ」。増収計画のプロジェクトチ-ム委員長に就任し た木本勉副組合長(48)は、力を込める。父の正美さん(74)は知内 ニラの礎を築いた8人衆の一人。35年前、正美さんが初収穫した時、 出荷期間は4月からの2ヵ月だった。その後、出荷期間を延ばすため、 組合員は栽培管理技術の向上に取り組んだ。初出荷の時期は少し ずつ早まり、今年は1月6日。1月から10月まで、年間三百日以上 も出荷ができるようになった。木本副組合長は「それでも、まだ、2ヵ 月の空白がある。知内ニラが常に店頭に並ぶようにしなければ、本 州の競合産地には勝てない」と語る。11、12月の空白期解消のた め、今年から5品種の試験栽培を本格的に始めた。知内の気候に合 った品種を選び出し、3年後の初出荷を目指す。地域農業の大黒柱 に成長した知内ニラ。組合員の視界には産地「日本一」が見えてきた。 「生きるためにサメは泳ぎ続けるというが、組織も現状に満足した時 点で成長が止まる」。石本組合長(54)は、将来をしっかり見据えて いる。
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