井須 豊彦(脳神経外科医・釧路)
私は、背骨の手術を専門としている脳神経外科医です。手術は難しく、常に最先端の高度な技術を要するため、手術結果の向上を目指して、日夜、努力してきました。しかしながら、すべての患者さんに満足してもらえるというわけではありません。患者さんの訴える、しびれや痛みに対し、薬や手術による治療を行っても満足すべき症状の改善か゛得られない場合には、外科的治療の限界を感じることがあります。ある60歳代の女性のことです。腰の神経の通り道である脊柱乾が狭くなる腰部脊柱管狭窄症の手術を施行しました。下肢痛、しびれは顕著な改善をしているのに腰痛が残っており、薬による治療でも芳しくない状況でした。患者さんの「腰の痛みを何とか軽くできませんか」との懇願に、遠方ではありましたが、札幌の知り合いの鍼灸師を紹介しました。その治療後、1ヵ月ほど後に、私の外来を受診され、「先生、おかげさまで痛みは大分やわらぎました」との言葉。大きな期待はしていなかったものの、思わぬ良い結果に、患者さんと2人で喜び合いました。一般的に西洋医学では、科学的根拠が無ければ評価しない傾向にあります。しかし東洋医学の鍼灸治療は、そんな西洋医学の限界を埋める一面があると、あらためて認識した次第です。
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