人工甘味料でダイエット? 胃腸にも「味」の受容体
おいしい、甘い、苦いなどと感じるのは、口に食べ物を入れて味わっているときである。これらの味は、うま味物質や甘味物質、苦味物質が受容体と呼ばれるタンパク質と結合することで認識されている。ところが最近、胃や腸にも甘味、うま味および苦味を感じる受容体が舌と同じように存在していることがわかってきた。胃腸で感じる味はどのように役立てられているのだろうか。苦味は体に毒になる物質が持っている味である。従って、口の中で味わっている時に苦いと感じれば飲み込まないはずだが、時として飲み込んでしまう。そのような場合の防御手段として、嘔吐を引き起こすために胃腸に苦味を感じる仕組みがあると考えられている。胃腸は、甘味やうま味を感じて摂食を調節している。摂取するカロリ-が多すぎるとメタポリック症候群の原因になるということで、カロリ-の元となる砂糖の代わりに人工甘味料が添加されたジュ-スやソ-ダを飲んでいる人も多い。しかしながら、カロリ-を少なくするために、ダイエット飲料を飲んでいても砂糖入り飲料と同様にメタポリック症候群になるという報告がある。なぜ、このような矛盾が生じるのだろう。一つの可能性は、胃腸に存在する甘味受容体が低カロリ-の人工甘味料を感じると、カロリ-を持った甘味を感じたようにホルモンの分泌などの応答をする。しかし、実際はカロリ-が低いので、そのギャップを埋めるためにより多くの摂食を促す可能性が考えられている。このように、思惑通りにならないダイエットだが、将来的には胃腸での甘味受容体を邪魔する薬を開発することによって、摂食を抑制することが可能になるかもしれない。(柏柳 誠=旭川医大医学部教授)
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