生活の問題点知る「特効薬」=加藤 雅彦
糖尿病患者さんが自分の状態を一番よく実感できる方法は日常生活の中で血糖値を測ることです。「前回の話しで血糖値よりもHbA1c(ヘモグロビン・エ-・ワン・シ-)が重要だと言っただろう!」とつっこみを入れる方がおられるかもしれません。覚えていてくださってありがとうございます。確かにそう書きました。HbA1cは長期間の平均血糖値を表し、この値が高いほど糖尿病性細小血管合併症(網膜症・腎症・神経障害)をおこす危険が高くなります。ただ、この検査にも弱点があります。HbA1cは具体的な問題点を示してはくれないのです。「HbA1cが高くなりましたね」「そうですか。いつもどおりの生活ですけどね」。これは私と患者さんの間でよく交わされる会話です。毎日の生活で、どこが原因で血糖値が上がっているのかわからない。このような状態で、「食事・運動を見直してください」と言っても、患者さんはどこを正せばよいのかわかりません。そこで役立つのが自己血糖測定です。自分で手の指やてのひらからごく少量の血液を採り、5秒間で結果がわかります。「カレ-ライスや天ぷらの後は必ず血糖値が高い」「柿を食べた後にこんなに血糖値が上がるなんて」などと、さまざまな気づきがあります。1日の生活の中でどこに問題がありそうか、どの時間が血糖値を測れば問題点が明らかになるか-患者さんの話を聞きながら探っていきます。血糖値をみた患者さんが生活の問題点に気づき、それが改善されるとHbA1cも下がる。こうなると、自己血糖測定は薬と同じ、治療法のひとつです。(北海道医療センタ-糖尿病・脂質代謝内科医長)
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