位置関係や運動、全身神経で=當瀬規嗣解説
大抵の方は、歯の治療で麻酔をかけられた経験をお持ちだと思いま す。そのときのことを思い出してください-。麻酔は、ほおの表面ま で効いているほおの部分は、なくなってしまったような感じがしませ んでしょうか。そこを指でさわると、ほおが確かにあるのですが、とて も変な感じがします。指はほおの存在を感じることができますが、ほ おは指を感じることができないからです。このことは、普段、私たちは ほおの存在をさわらなくても知っているということです。ほおに分布し ている神経が、ほおの存在を脳に伝えているということです。これを 「固有感覚」といいます。麻酔のせいで、固有感覚がまひしてしまう のです、このような奇妙な感じを受けるわけです。事故などでは片脚 を失った人が、傷が完治した後に、ないはずの脚の存在を感じること があります。これは、残っている脚の神経の切れ端が反応して、脳が それを脚からの情報と認識してしまうからです。これを「幻肢(げんし)」 といいます。固有感覚の存在を示す一例です。ところで、「位置覚」と 「運動覚」の2種類があります。位置覚は、手足や顔など位置関係を 常に把握するための感覚で、例えば、自分のひじや肩が曲がってい るのか、伸ばされているのか、感じ取るものです。運動覚は、体のさ まざまな部位の運動の強さや速さなどを知る感覚です。つまり、私た ちは固有感覚なしに体を適切に動かすことはできないのです。こうし た固有感覚を感じ取る神経は、全身の皮下組織、筋肉、骨、関節な どに広く分布しています。私たちは体を実感しながら日々生活してい るのです。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部部長)
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