餌代「黒毛」の半分/国産飼料で安全性も 音更町農協で普及事業
[音更]輸入配合飼料価格の高騰で打撃を受け ている肉牛生産で、黒毛和牛に比べ脂肪分が少 ない「日本短角種」が農家の注目を集めている。 牧草やデントコ-ンなど国産の粗飼料だけで肥 育できるためで、十勝管内音更町農協は、道内で初めて農協単位で 普及を目指す試験事業に乗り出した。
同町駒場の牛舎で、40頭の短角種がデントコ-ンを食べている。大 豆やトウモロコシなどの配合飼料は見あたらない。10月末から試験 肥育を開始した同農協の担当者は「よりおいしい肉にするため、配合 飼料も与えますが、黒毛和牛の半分以下ですね」と話す。短角種は 英国原産の品種と南部牛を交配してできた。道内では1886年(明 治19年)、帯広開拓で名高い晩成社が乳用に導入。日高管内えりも 町などで主に漁業者が収入を補うために肉牛として飼育してきた。そ の後、霜降り肉の黒毛和牛の普及や牛肉輸入自由化などの影響か ら頭数が激減。道畜産振興課によると、道内の飼育頭数は1970年代 の5千頭が現在は約8百頭に。脚光を浴び始めた理由は、餌代の安 さだ。黒毛和牛の肥育は霜降りの割合を増やすため餌の87%を配合 肥料が占めるが、短角種は肉の脂肪分が少ない体質などのため、牧 草だけで肥育できる。価格が2年前の1・5倍になつた配合飼料の使 用量が減り、素性が確かな国産飼料主体の餌で食の安全性もPRで きる。関心は全道的に高まり、十勝に加え、渡島管内八雲町など道内 各地の生産者や研究者が昨年「北海道短角研究会」設立した。
研究会会長の新名正勝・酪農学園大教授は、短角種は黒毛和牛 に比べ「大ざっぱに言って餌代などの経費が4割は減らせるので は」と魅力を語る。研究会メンバ-の北十勝ファ-ム(十勝管内足 寄町)は、短角種470頭を飼育。地元の畑作農家にデントコ-ンを 栽培してもらい、ふん尿を堆肥にして栽培農家に還元する「耕畜連 携」にも取り組んでる。課題は流通面だ。短角種の肉は、まだ一般 市場に流通していないが、低脂肪の赤身が特徴のため、霜降り度 合いを重視する牛肉市場では評価が低い。音更町農協は当面、生 産者の拡大を目指す方針だが、新名教授は「霜降りであれば、おい しいと考えるのは、柔らかさが肉のおいしさだと誤解している」と主 張。消費者への直接販売を目指し、研究会で今春からPRを開始す る。
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